睡眠不足を寝だめでは解消できない
睡眠の専門家のあいだでは、睡眠不足が蓄積されて慢性化している状態を「睡眠負債」と表現します。「負債」という表現には、気がつかないあいだにふくれ上がってしまう、ネガティブなニュアンスがこめられています。
睡眠負債がたまると、脳や体にダメージを与える危険因子が蓄積されていくだけでなく、眠りたい欲求(睡眠圧)も強くなっていきます。
平日の睡眠不足を、「休日に寝だめして解消する」という人がいますが、これは、たまりたまった負債のほんの一部を返済しているにすぎません。つまり、自覚はなくても睡眠負債を抱えて生活していたと考えられるのです。
ふだん平均7.5時間睡眠の健康な人を対象に、毎日14時間ベッドに入り、好きなだけ寝てもらう実験を行なったところ、3週間後、平均睡眠時間は8.2時間で固定されました。このことから、1日40分ぶんの睡眠負債を抱えていたとわかったと同時に、日々の睡眠負債が清算されるのに、3週間かかることも判明したのです。
そのうえ、睡眠負債が解消されると、寝てもいいといわれても、体が必要とする睡眠時間以上には眠れない、つまり「睡眠預金」はできないことも明らかになりました。
休日の寝だめでは、日ごろの睡眠負債を完全に解消することも、睡眠預金もできないのです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 睡眠の話』 監修:西野精治
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 睡眠の話』
監修:西野精治
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公開日:2021.06.08