緊張を緩めて副交感神経を優位に
自律神経は呼吸や代謝、体温調節、臓器の働きなど、生命維持に欠かせない機能を私たちの意思とは関係なくコントロールするシステムです。 自律神経には交感神経(ON・動)と副交感神経(OFF・静)という対照的な役割を担う2つの神経があり、状況に応じて切り替えることで健康な体を保っています。
しかし、ストレスや過労、不規則な生活などが続くと、交感神経ばかりが優位になってバランスの崩れた状態に。その結果、頭痛やめまいといった不調が表れてくるのです。心因性腰痛も、こうした自律神経の乱れが招くトラブルの1つと考えられ、いくつかの発症メカニズムがあります。
心の問題やストレスがあると、体は交感神経が優位になり、ある種の興奮状態に陥ります。それにより副交感神経の作用が減弱して、普段は気にならない刺激でも痛みとして感じてしまうのです。また、交感神経が優位な状態では、痛みを抑制する神経伝達物質のセロトニンの分泌量が減って、痛みをより強く感じてしまうことも知られています。交感神経の高ぶりが眠りを浅くし、疲労がたまることで痛みを強く感じる場合もあるでしょう。
原因不明、あるいは慢性的な腰痛に悩んでいる人は、副交感神経が優位になる時間を多くつくってみてはいかがでしょうか。もしも原因が心の不調にあれば、自律神経のバランスを整えることで、こじらせた腰痛が改善するかもしれません。
40代からは運動習慣で未来の腰痛予防
加齢とともに腰痛のリスクは上がります。特に40代からは運動習慣を定着させ、腰痛予防に加えて、健やかな体をコツコツと整えていきましょう。
運動による刺激で筋肉量や骨密度UP
筋肉は収縮と弛緩で強くなり、骨は重力の刺激を受けて骨密度が上がり、強化されます。筋トレや体操に加えて足踏みなど、骨に衝撃を与える筋肉量を増やす骨密度を上げる動きも行うと効果的です。
30代から腰痛を発症するケースも
私の経験から、30~40代には腰椎椎間板ヘルニアの患者さんが多く、50代以上になると腰部脊柱管狭窄症の人が増えてきます。
出典:『専門医がしっかり教える 図解 腰痛の話』著/吉原潔
【書誌情報】
『専門医がしっかり教える 図解 腰痛の話』
著:吉原潔
今や4人に1人が悩んでいるとも言われる国民病である『腰痛』。ぶつけた、痛めた、ぎっくり腰といった原因がハッキリしている腰痛だけでなく、『脊柱管狭窄症』『椎間板ヘルニア』『ぎっくり腰』などによる痛みや、病院で検査しても特に異常が無いと言われるものまで、痛みの原因は多種多様にあります。しかし、そんな痛みに対して痛み止めや筋弛緩剤などの薬で対処療法だけをしていても根本の治癒にはなかなか繋がらないため、しっかりと『腰痛の原因』と向き合うことが大切です。本書ではそんな腰痛を治して、長い人生を痛み無く健康に過ごすために、『脊柱脊髄外科専門医』と『フィットネストレーナー』という2つの肩書を持つ腰痛の名医による、腰痛が治らない意外な原因と、骨と筋肉にアプローチする自宅でできる腰痛のセルフケア法を紹介します。
公開日:2023.07.17