選手は異なる最適化をする
私たちは異なる人間であり、異なる環境、言語、文化で育ち、各個人の才能も異なる。そのように考えるとサッカーの戦術やポジションは各選手の特徴を活かしたものでなければならない。
同じトレーニングを実践しても、人生を通じてどのようにそのスポーツを学んだか、何を学んだか、個人の特徴(遺伝含む)によって、全く異なる方法で自己最適化するので解決策も異なる。これが「異なる最適化」である。
各選手がダイヤモンド・オフェンスの同じトレーニングをしても、試合では各選手で試合の状況に対応し、ダイヤモンド・オフェンスの異なるパフォーマンスの最適化が起こるのだ。
例えば、ボール保持者がタッチライン沿いで相手と1対1で相手の背後には大きなスペースがある状況。ボール保持者は、ドリブルで相手を抜くか、それとも近くのチームメートへパスをするか、その状況に最適なプレーを自身の特徴に応じて選択する。ドリブルが得意であればドリブルで相手を抜くかもしれない。そうでなければパスを選択する。それもできなければボールをキープするかもしれない。もしかすると相手にボールを取られるかもしれない。これは選手自身や相手、チームメートの能力によって、その時のプレー状況によって変わる。これが、選手は同じトレーニングをしても、異なる最適化をする理由である。
陸上競技とサッカーを比較すると、陸上選手は自分自身のことだけに集中することができるが、サッカー選手は自身のプレーに集中しながら、チームの一員としてのプレーにも集中しなければならない。サッカー選手の試合中のプレーの意思決定の大部分が無意識で行われ、チームメートと相互作用する複雑な環境がそのとき選んだ、創発的な精神状態の結果が各選手の異なるパフォーマンスの最適化を生む
サッカーはチームスポーツであり、選手間で相互作用してプレーしている。各選手を部分として考えるデカルト主義(還元主義)的な方法で分析するのではなく、サッカーを全体論的な方法で観察して、選手は全体の一部であると考える必要がある。同時に選手のパフォーマンスの最適化は、選手1人1人が異なる人間であり、異なる最適化をすることを前提として考える。
【著名人の言葉】
「各選手が遺伝的および能力の差異によって様々な最適化をすることを『異なる最適化』と言う。」フランシスコ・セイルーロ(FCバルセロナフィジカルコーチ、大学教授)
出典:『ダイヤモンドオフェンス サッカーの新常識 ポジショナルプレー実践法』坂本圭
『ダイヤモンドオフェンス サッカーの新常識 ポジショナルプレー実践法』
著者:坂本圭
日本ではまだ珍しいサッカー攻撃の概念・ポジショナルプレーを取り入れた戦術書!!スペインのプロチームでコーチライセンスを獲得した著者が、サッカーを勉強したい学生や指導者、日本式ではなく世界のトップシーンで導入されている新しいサッカーの攻撃方法を実践したいと思っている方々のために、ポジショナルプレーを実践するための方法としてダイヤモンドオフェンスを伝授します。
公開日:2021.12.08