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『練習は「1+1=2」を忘れぬように』掛布雅之さんトークショー

Text:遠藤玲奈

掛布雅之さん『ラブすぽ』トークショーレポート 

カケフ!カケフ!
主役が階段を下りる途中から、盛大なコールが沸き起こりました。女性の姿も見えますが、31を背負ったファンの多くは四十代以上の男性。1985年の優勝に熱狂した、熱い阪神タイガースファンに迎えられたのは、ミスター・タイガース、掛布雅之さんです。

昔、大阪のラジオで中村鋭一さんが毎朝「掛布ちゃん」の話をしていた、とは私の母の思い出話ですが、そのように親しまれるのがよくわかる温かい雰囲気と、野球に対する深い見識、そして、タイガースというチームと、そこでプレーする後輩、教え子たちに対する愛情をたっぷり感じた2時間でした


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長年、チームの四番打者として活躍した掛布雅之さんには、確固たる打撃理論があります。
時には体勢を崩してホームランを打つ、というのもそのひとつです。普通は崩れた状態からはうまく打てないものですが、崩さなければ打てない球があると掛布雅之さんはおっしゃいます。あくまで自ら「崩れる」のであり、ピッチャーの投球によって「崩される」のとは違います。
崩れる勇気をもてるのがいいバッター、という表現をされていました。そのような気持ちの作用も大きいでしょうし、崩されるのではなく自ら、といっても、最も自然とは言えないフォームでホームランを放つのにかなりの技術が必要であることは間違いありません。それができるだけの練習を日頃から積んでおかなければならないということです。

地道な練習を継続することの大切さについては、1+1=2であることを忘れない、という言葉でおっしゃっていました。
この練習を一度したから急に飛躍的に伸びる、ということはありえない。1を重ねることで、2日やれば2、3日やれば3、という風にひとつひとつ積み重なり、技術が向上していく、ということです。 ちょっとした隙間時間があった時に、選手数人でたむろするのではなく、ひとりで自分の野球を追求すること。例えば、遠征先のホテルにも、素振りをするスペースくらいはあります。
タイガースで掛布雅之さんのご指導を受けていた選手が、教えを守り、NPB合同チームで海外遠征した際にホテルで素振りをしようと場所を探していたことがありました。その時チームを率いていたコーチからそれを伝え聞いた時、掛布雅之さんは心から嬉しかったそうです。
この選手こそ、先日、引退試合が話題になった横田慎太郎さんです。地道な積み重ねを怠らない姿勢は、今後の人生にも必ずよい影響を及ぼすでしょう。タイガースの後輩選手たちにも、掛布雅之さんの教えと横田慎太郎さんの実践が引き継がれることが期待されます。


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西岡剛選手は、掛布雅之さんについて「失敗をわかって、飲み込んでくれる」と話していたそうです。自分は現役時代から失敗などしていなかったかのような態度で、当然のように完璧を求める指導者もいる中、掛布雅之さんはそうではなかった。自分も失敗していたことを覚えているからこそ、頭ごなしではない、選手の目線での丁寧な指導になる。西岡剛選手の感受性は、その優しさを敏感にとらえていました。 

そんな掛布雅之さんが、二軍監督時代に唯一怒声を放った相手が、エリック・キャンベルさんでした。キャンプで一塁の守備をしていて、ゴロから逃げ回る様子に、日本の野球を侮るなと厳しく注意せざるをえなかったそうです。
アメリカで指導者になったキャンベルさんと、掛布雅之さんは先日、顔を合わせる機会がありました。当時、掛布雅之さんがいちばんしっかり話を聞いてくれたと、とても感謝しているそうです。
時代を超えて、海を超えて。熱く優しいミスター・タイガースの教えは、広く受け継がれてゆくのです。


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『ラブすぽ』ライター:遠藤玲奈
池田高校のやまびこ打線全盛期に徳島に生まれる。慶應義塾大学法学部卒業、東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。選手としての経験はないが、独自の方法で野球の奥深さを追究する。特に気になるポジションは捕手。フルマラソンの自己ベストは3時間31分。

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