◉壁の色に影響を受けた従業員
色は感覚に影響を与えます。その代表的なものが温度感覚です。赤・橙などの色を見ると暖かく感じ、青・青緑などの色を見ると涼しいと感じます。色と温度にまつわるこんな話があります。ロンドンにある工場のカフェテリアでは、従業員から「寒い」という声が上がりました。ところがエアコンの室温の設定は従来通りの21度です。そこで室温の設定を3度上げました。それでもその訴えは減らなかったのです。
原因は明るい青の壁にありました。従業員は青い色の影響を受けて、実際の温度よりも寒いと感じたのです。そして、明るい青から橙に塗り替えたところ、従業員の訴えは今度は「暑い」に変わったそうです。明るい青と橙では体感温度で3、4度の違いがあると思われます。
◉こたつの色の秘密
こたつには色と温度に関わる秘密が隠されています。赤外線ランプを使ったこたつは、発売当初は熱源部分が白かったのです。赤外線は可視光線(目で見える範囲)の外にあり、色は見えません。
ところが熱源部分が白いこたつは消費者に暖まることが伝わらず、なかなか売り上げが伸びませんでした。そこで熱源部分を赤くして売り出したところ人気商品となったのです。赤い色が体感的な暖かさをつくったのです。
◉温度を感じるメカニズム
なぜ前ページのようなことが起きるかというと、私たちは常にイメージの影響を受けてものを判断しているからなのです。赤、橙は火や太陽などを連想して暖かく感じ、青、青緑などは氷や水を連想して冷たく感じるのです。個々の体感から脳に備蓄された情報に大きな影響を受けていると考えられるので、感じ方には個人差があると考えられます。
「火は熱い」といった誰もが感じるもの(イメージ化が高いという)は共通で感じやすいものですし、赤紫など多くの人が共通で感じにくい色もあります。ろうそくなどの炎は赤、橙をしています。実際に加熱すると物は、その温度に応じてその色を赤(赤黒)、橙、黄色、白、青白と変化させます。最も高温ではない赤を暖かく感じるのは経験からくるイメージの備蓄と考えられます。
◉暖色と寒色
色を心理的に分類するときに赤、橙、黄色といった色は暖かみを感じるため暖色といい、青や青緑といった色は冷たさを感じる色なので寒色といいます。
暖色と寒色は色彩心理を説明する上で基礎的な分類になるので覚えておいてください。暖色の明確な範囲は区切られていません。温度の「感じ方」なので個人差もあり、細かく分類する意味がありません。点でとらえず、効果を伴う範囲として理解しましょう。
出典:決定版 色彩心理図鑑
【書誌情報】
『決定版 色彩心理図鑑 』
ポーポー・ポロダクション 著
色彩心理ジャンルでロングセラー連発!
「ポーポー・ポロダクション」による、色彩心理のすべてがつかめる決定版!
色の不思議な心理効果から色が見える仕組み、色の由来、雑学までを、
図・イラスト・写真でわかりやすく解説します。
公開日:2022.05.11