「値引き額」より「無料」のほうに反応してしまう
私たちは「無料」に過剰に反応します。たとえば500円が300円値引きされて200円になったものと、100円が0円になったものでは、圧倒的に0円商品が選択されます。割引金額は300円の商品のほうが大きいのに、選ばれないのです。
ネット通販では送料無料という言葉を聞くと、商品の値段が高くても、送料無料の商品のほうに魅力を感じてしまうこともあります。私たちが無料に魅力を感じるのは、得をしたいからではなく失敗したくないと考える損失回避性の影響です。無料であるならば、失敗してもダメージを受けにくいためです。
無料化を求める社会の動きとアプリの実例
近年、景気後退と無料コンテンツの増加により、企業の予算に関する考え方も変化しています。コンテンツ制作に関わる制作費、運営費をより安価にしなくてはいけなくなりました。その結果、「質の高いものをより安く」の「より安く」だけが残り、都合よく安価から無料で製作してくれる人を求めるようになりました。
クリエイターの中には安くても仕事がないよりはいいと考える人が増え、その結果、報酬はより安価になり、さらに学生や初心者が練習がわりに無料でやるという構造ができはじめています。社会が無料を求める動きもあり、良質なクリエイターが育たない危険な状況でもあります。
実際に私たちがよく使うアプリでも一例があります。ある企業が複数のアプリを期間限定でダウンロード無料にしました。期間終了後、有料になるとダウンロード数が激減するかと思われましたが、伸び続けたのです。無料期間中に口コミでダウンロードしても損はないと認識されたのです。
「ゼロからわかる 知らない損する 行動経済学」はこんな方にオススメ!
・行動経済学を学んでみたい!
・無料と聞くと魅力を感じてしまうのはなぜ?
・ビジネスに行動経済学を取り入れてみたい
・行動経済学を学ぶメリットを知りたい
そう感じている方にはぜひ本書『知らないと損する 行動経済学』を手に取っていただけたらと思います。
出典:『ゼロからわかる 知らないと損する 行動経済学』著/ポーポー・ポロダクション
【書誌情報】
『ゼロからわかる 知らないと損する 行動経済学』
ポーポー・ポロダクション 著
コロナ禍により、さらに注目を集めている行動経済学。消毒液をプッシュするとおもしろい音が出ることで、手指の消毒を促進したり、レジ前に足跡のマークをつけてソーシャルディスタンスを保ったり。行動経済学は難解な経済の話だと思われることもありますが、そんなことはありません。「1980円はなぜか安く感じる」「中古品の買取価格に毎回満足できない」「投票の話を聞くだけで投票率が上がる」など、「つい、○○してしまう」という人の不思議な行動を扱う、身近なテーマです。本書ではお金と心理の話を中心に、そんな行動経済学のおもしろさが伝わる内容となっています。初心者の方はもちろん、行動経済学への理解を深めたいと考える方にもおすすめしたい一冊です。
公開日:2022.09.24