グローブはどう選ぶ?
近年のトレンドは操作性の高い”コユニ”
野手にとって“相棒”とも言えるグローブを選ぶ際、どういう基準で決めていますか? 憧れの選手が使っているとか、好きなメーカーだからなど、見た目を優先している人も少なくないかもしれません。
もちろんカッコいいにこしたことはないと思いますが、最も重要なのは捕りやすさです。そこでまず考えてほしいのが、どんなグローブを使えば守備範囲が広くなりやすいかということです。
まず、ゴロをさばく体勢は「正面で捕る」と「片手で捕る」の2パターンに大きく分けられます。本書では「正面で捕る」ことにこだわる必要はないとしていますが、主な理由は以下になります。
①パフォーマンスラインで左足が使いやすい場合、ゴロの正面に入るより、体の左側で捕球するほうが動きやすいという人もいる
②両手で捕る(正面で捕る)より、片手で捕る(シングルキャッチ&逆シングル)ほうが、守備範囲が広くなる
③正面に入っての〝当て捕り〞では、強い打球には対応しにくい
守備で大切なのは、いかにアウトの数を増やしていけるかです。それにはプレーの正確性や素早さ、そして守備範囲の広さが関わってきます。
③で挙げた“当て捕り”は、素早いプレーにはつながるでしょう。グローブで捕球するのではなく、文字どおりグローブの土手でゴロを当てるようにして止めて、添えている手で素早く握り変えて送球できることがメリットです。ただし、“当て捕り”は両手で捕る(正面で捕る)ことを前提としているので、守備範囲が限られます。強いゴロが飛んできた場合、グローブの土手に当てても打球の勢いに負けて大きく弾いてしまうこともあるでしょう。
対してシングルキャッチや逆シングルは、正面に入っての捕球より守備範囲が広くなり、強い打球にも負けずにキャッチできます。練習していけば、正面で捕るのと同じくらい捕球の精度も高められるはずです。メジャーリーガーの多くがシングルキャッチと両手での捕球を状況によって使い分けていることを考えると、必ずしも「正面で捕る」必要はないのです。
シングルキャッチの確率を高めていく上で重要になるのが、どんな形状のグローブを選ぶかです。一般的にグローブは「縦型」と「横型」に分けられますが、私はもっと細かく分類する必要があると考えています。例えば野手の場合、グローブのポケットが深いとシングルキャッチをしやすく、そうした形状のものを「縦横型」と呼んでいます。
一方、“当て捕り”用は「縦型」で、ポケットが浅いです。そもそも土手で当てて止めることを目的につくられているので、ポケットが深くある必要はないのでしょう。
本書で述べてきたように私はシングルキャッチもできることを推奨していますが、そうした捕球をする上で、近年プロ野球の名手たちの間で流行し始めているのが“コユニ”という仕様のグローブです。文字どおり、グローブの小指を指す箇所に薬指と小指の2本を入れて、中指と人差し指はそれぞれ1本ずつ横にずらし、人差し指の箇所を開けて装着します。詳しくは66ページから説明していますが、人間の身体の構造上、薬指を中心に回転させたほうが手の操作性を高めやすくなるのです。加えて“コユニ”にするとグリップの力が上がりやすいので、強い打球にも負けずに捕球しやすくなります。そうしてうまくキャッチできれば、スムーズな送球にもつなげやすいはずです。
写真右が“コユニ”の縦横型グローブ。写真左が縦型の“当て捕り”グローブ。当て捕りのほうはポケットが浅い。操作性の良さも含めて自分に合ったグローブを選ぶのが重要。
プロ野球で“コユニ”が流行り出したきっかけは、私が当時ウイルソンに在籍していたメーカーの担当者と知り合い、“コユニ”に特化したグローブを開発してもらったことでした。“コユニ”のメリットが埼玉西武ライオンズの外崎修汰選手に伝わり、2020年シーズンから使い始めます。チームメイトで二遊間のコンビを組む源田壮亮選手が興味を示し、自分のグローブにも取り入れて、同じメーカーのグローブを使っている福岡ソフトバンクホークスの今宮健太選手へと広がっていきました。3人はいずれもプロ野球を代表する内野の名手で、“コユニ”の特性をよく感じられたのでしょう。彼らの守備範囲の広さや堅実なプレーの裏には、名手を支える相棒がいるのです。
“コユニ”のメリットは、実践してもらうのが最もわかりやすいと思います。グローブをはめなくてもわかるので、試しにやってみてください。
まずはグローブをはめる側の腕を伸ばして、薬指を中心に回転させます。すごく回しやすいと思います。次に、人差し指や中指を中心に、伸ばした手を回転させてください。前腕の筋肉を結構使うと思います。人間の構造的に、薬指を中心に操作したほうが手をスムーズに動かしやすくなるのです。
以上を踏まえて設計されたのが“コユニ”のグローブです。加えて、指の部分が強くなるようにつくられているので、キャッチもしやすいという特性があります。いわば、シングルキャッチに向いたグローブと言えます。付け加えれば、縦横型でも“当て捕り”をすることは可能です。
より操作性を求めるなら小ぶりなグローブを選ぼう
“コユニ”だけでなく、近年のトレンドと呼べるのが、従来のグローブよりもやや“小ぶり”なグローブです。サイズ感がひと回り小さくなるだけで、操作性はぐんと高まります。シングルキャッチや逆シングルでの捕球はもちろん、捕ってから投げるまでの動作もスムーズになるはずです。特に顕著なのが外野手用グローブ。通常の外野手用グローブは縦長につくられていますが、最近では操作性を求めて“小ぶり”なグローブを使うプロ野球選手が増えている印象を受けます(詳細は78ページ参照)。
2023年に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパンの優勝に貢献したラーズ・ヌートバー選手(セントルイス・カージナルス)も、本人から直接聞いたわけではありませんが映像を見る限り、通常より“小ぶり”な外野手用グローブを使っているようです。彼の球際の強さや捕球から送球までのスムーズな動きの要因のひとつには、グローブの形状もあると言えるでしょう。
また、私が今注目しているのがファーストミットです。ご存じの通り、通常のファーストミットは野手の送球を“捕る”ことに特化しているため、ポケットは深く、ミット自体も大きく設計されています。
しかし、ファーストの役割は野手からの送球を捕ることだけではありません。左打者が増えた近年は、一塁線に鋭いゴロが飛んでくるケースも以前より増えたように思えます。走者がいる場合はゴロを捕球するだけでなく、二塁や三塁、本塁に素早く送球しなければいけなかったり、状況次第では中継プレーに参加することもあるはずです。
ファーストも内野手のひとりであり、セカンド、サード、ショートと同じように捕球から送球までの動きをスムーズにしたり、ゴロを逆シングルで捕球する必要があることを考えると、現在のファーストミットの形状は決して正解とは言えないはずです。
そこで私が考えたのが、既存のファーストミットより操作性を高めた“小ぶり”な“ファーストグラブ”です。写真を見てもらえるとわかるように、通常のミットよりも横幅が狭く、操作性が高くなっています。ファーストに求められる確実な捕球と操作性のバランスをとった形状と言えるかもしれません。
2023年時点では、メーカーさんに依頼をして作ってもらっている段階ですが、将来的にはこの“ファーストグラブ”が広く知られることになるのでは……と考えています。
練習で活用したいトレーニンググラブとフレーミングミット
グローブの操作性を高めるために日々の練習で活用してほしいのが、トレーニンググラブとフレーミングミットです。ともに、通常のグローブよりもかなり“小ぶり”に作られており、素手とグローブの中間くらいをイメージしてもらえればわかりやすいかもしれません。
フレーミングミット
通常のキャッチャーミットよりも小ぶりに作られており、フレーミングやブロッキングの練習に活用できる(写真右がフレーミングミット)
“小ぶり”なぶん、操作性は非常に高く、逆シングル、シングルキャッチ、フレーミングやブロッキングに慣れていない選手は扱いやすいというメリットがあります。一方で、小さく設計されているぶん、しっかりとポケットで捕球しないとグローブにボールが収まりません。
練習で使ってグローブの動かし方や捕球動作を体になじませ、そこから試合用のグローブに持ち替えることで、“捕りやすさ”を実感できるというメリットもあります。
また、特にトレーニンググラブをおすすめしたいのが左投げの選手です。左利きはポジションが限られるため、単純に内野の守備練習をする機会が少ないのが現状です。
トレーニンググラブ
素手とグローブの中間のようなイメージ。左投げ用のトレーニンググラブは数も少ないが、感覚をつかむために練習でも積極的に活用してほしい。
そのため、左投げの選手は「フィールディングに不安がある」と思い込んでいるケースが多くみられます。実際は練習する機会が少ないだけなので、左投げの選手こそ、トレーニンググラブを活用して逆シングルやシングルキャッチの感覚をつかんでほしいと考えています。
グローブの形状は、ここまで野球選手のプレーに大きな影響を及ぼすものです。
守備で思ったようなプレーをできていない選手は、グローブを見つめ直してみるといいかもしれません。自分に合っていないグローブを使っているために、守備に悪影響が出ている人が少なくないからです。そうした選手が“コユニ”や“小ぶり”なグローブを使い始めると、グッと上達した例もあります。
“相棒”とも言えるグローブの選択は、野手にとって極めて大切です。本書の話も踏まえて、自分に合ったグローブを探し出してください。
出典:『革新的守備・走塁パフォーマンス』高島誠
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1歩=0.1秒にこだわれば、俊足、強肩は、獲得できる、体格に劣る選手でも練習の質や技術を高めることで、プロと同等の水準を発揮しやすいと言えます。本書では、どのような意識で、どうやったら守備や盗塁の成功率を高めることが出来るか、肩を強くすることが出来るのか?実際にプロ野球選手と共に自主トレを行っている高島氏のメソッドを紹介すると共に、効果的な練習法を提案します。わずか一歩を短縮することで0.1秒を作り出すために何をしなければならないのか?それが革新的なパフォーマンスにつながります。
プロでも使われる技術を、高校生でも実践できるようオールカラーでわかりやすく解説!
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気になる中身を少しだけご紹介!グローブはどう選ぶ?
近年のトレンドは操作性の高い“コユニ”
野手にとって“相棒”とも言えるグローブを選ぶ際、どういう基準で決めていますか?憧れの選手が使っているとか、好きなメーカーだからなど、見た目を優先している人も少なくないかもしれません。もちろんカッコいいにこしたことはないと思いますが、最も重要なのは捕りやすさです。そこでまず考えてほしいのが、どんなグローブを使えば守備範囲が広くなりやすいかということです。まず、ゴロをさばく体勢は「正面で捕る」と「片手で捕る」の2パターンに大きく分けられます。本書では「正面で捕る」ことにこだわる必要はないとしていますが、主な理由は以下になります。
①パフォーマンスラインで左足が使いやすい場合、ゴロの正面に入るより、体の左側で捕球するほうが動きやすいという人もいる
②両手で捕る(正面で捕る)より、片手で捕る(シングルキャッチ&逆シングル)ほうが、守備範囲が広くなる
③正面に入っての“当て捕り”では、強い打球には対応しにくい
守備で大切なのは、いかにアウトの数を増やしていけるかです。それにはプレーの正確性や素早さ、そして守備範囲の広さが関わってきます。③で挙げた“当て捕り”は、素早いプレーにはつながるでしょう。グローブで捕球するのではなく、文字どおりグローブの土手でゴロをあてるようにして止めて、添えている手で素早く握り変えて送球できることがメリットです。ただし、“当て捕り”は両手で捕る(正面で捕る)ことを前提としているので、守備範囲が限られます。強いゴロが飛んできた場合、グローブの土手に当てても打球の勢いに負けて大きく弾いてしまうこともあるでしょう。対してシングルキャッチや逆シングルは、正面に入っての捕球より守備範囲が広くなり、強い打球にも負けずにキャッチできます。練習していけば、正面で捕るのと同じくらい捕球の精度も高められるはずです。メジャーリーガーの多くがシングルキャッチと両手での捕球を状況によって使い分けていることを考えると、必ずしも「正面で捕る」必要はないのです。シングルキャッチの確率を高めていく上で重要になるのが、どんな形状のグローブを選ぶかです。一般的にグローブは「縦型」と「横型」に分けられますが、私はもっと細かく分類する必要があると考えています。例えば野手の場合、グローブのポケットが深いとシングルキャッチをしやすく、そうした形状のものを「縦横型」と呼んでいます。
一方、“当て捕り”用は「縦型」で、ポケットが浅いです。そもそも土手で当てて止めることを目的につくられているので、ポケットが深くある必要はないのでしょう。本書で述べてきたように私はシングルキャッチもできることを推奨していますが、そうした捕球をする上で、近年プロ野球の名手たちの間で流行し始めているのが、“コユニ”という仕様のグローブです。文字どおり、グローブの小指を指す箇所に薬指と小指の2本を入れて、中指と人差し指はそれぞれ1本ずつ横にずらし、人差し指の箇所を開けて装着します。詳しくは66ページから説明していますが、人間の身体の構造上、薬指を中心に回転させたほうが手の操作性を高めやすくなるのです。加えて“コユニ”にするとグリップの力が上がりやすいので、強い打球にも負けずに捕球しやすくなります。そうして上手くキャッチできれば、スムーズな送球にもつなげやすいはずです。
“打球は変化する”ことを理解しよう「ボールのどこを打つかで打球にかかる回転は変わる」
プロ野球選手の一流打者は、打ちたい打球をイメージしてボールとコンタクトする場所を狙い分けると言います。細かく分けると、ボールは上、下、外、内、前、後ろを打つことができます。同じ軌道のスイングでも、どの場所を打つかによって打球にかかる回転が変わります。だから、ボールの打つ場所を狙い分けるというのです。学生野球でそこまで狙える選手は珍しいでしょうが、さまざまな打球が飛んでくることは変わりません。
逆に言えば、規則的な回転の打球が飛んでくるとは限らないのです。ゴロがイレギュラーにバウンドするのはグラウンドの凹凸などに要因がある場合もあれば、そもそも打球の回転により、地面と接地した際に不規則な方向に弾んでいくことも考えられるわけです。イレギュラーバウンドのゴロに対応するためには、まずはそう知っておくことです。その上で、スピンアクシスボールでノックを受けてみてください。バットの入射角や、スイングの軌道、ボールを打つ場所により、打球にかかる回転の違いを視覚的に捉えることができます。そうしたイメージを持っておくだけでも、実戦での対応が変わってくるはずです。
★基本の構え・守備とは
★キャッチャーミットの動かし方とは?
★走塁時のスタート足について
★俊足になるための詳しいトレーニング法とは
などなど気になるタイトルが目白押し!
著者の高島氏の元には今なお、シーズンオフの自主トレで球団の垣根を越えて、プロの野球選手が集まってきます。長くプロ野球選手を続けるために、自分に必要な技術を高めるため、高島氏の始動を求めて来るのです。本書はそこで教えるメソッドを具体的な練習方法と共に紹介しているので、あなたも「俊足」「強肩」を獲得できるようになります!
『革新的守備・走塁パフォーマンス』
著者:高島誠
多くのプロ野球選手を育成し、プロ野球選手のサポートをするトレーナーな高島誠氏による「革新的パフォーマンス」シリーズ第4弾!1歩=0.1秒にこだわれば、俊足、強肩は、獲得できる、体格に劣る選手でも練習の質や技術を高めることで、プロと同等の水準を発揮しやすいと言えます。本書『革新的守備・走塁パフォーマンス』では、どのような意識で、どうやったら守備や盗塁の成功率を高めることが出来るか、肩を強くすることが出来るのか?実際にプロ野球選手と共に自主トレを行っている高島氏のメソッドを紹介すると共に、効果的な練習法を提案しています。わずか一歩を短縮することで0.1秒を作り出すために何をしなければならないのか?それが革新的なパフォーマンスにつながります。プロでも使われる技術を、高校生でも実践できるようオールカラーでわかりやすく解説。野球に携わるすべての人に読んで欲しい一冊です。
公開日:2023.07.11