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捕手歴2年でドラ1指名!?プロ1年目からイースタン“三冠”に輝いた!松尾汐恩/横浜DeNAベイスターズ

Text:小林雄二

動けて走れて洞察もできるうえに華もある次の時代の捕手像を創造しうる凄いヤツ

⚫︎横浜DeNAベイスターズ
松尾汐恩

キャッチャー歴2年ほどで「ドラ1捕手」に

甲子園という大舞台において数多の“スター”を輩出してきた大阪桐蔭のなかでも、近年では藤原恭大(現千葉ロッテ)、根尾昂(現中日)の両輪は別格の輝きを放っていたように思う。ただ、この二人に負けず劣らず、高校野球ファンからの支持率が高かったのが松尾汐恩(捕手)である。

その大阪桐蔭にはそもそも遊撃手として入部しているのだが、1年秋の大会中にチーム事情により、急造の捕手として試合に出場。ところが、「足の速さや守りの機敏さ」(西谷浩一監督)が尋常ではなく、さらには遊撃手として磨かれたフットワークと強肩を活かした、捕手としてのあまりある適性にそのまま捕手へとコンバート。

そこからの松尾汐恩が、多くの高校野球ファンの知る「大阪桐蔭のキャッチャー、松尾汐恩」だ。翌2年春のセンバツ1回戦、智弁学園戦は代打での途中出場で無安打に終わり、チームも初戦敗退と意外にも地味な成績での甲子園デビューとなったが、同年夏の甲子園では背番号「12」ながら正捕手を務め、3年生エース・松浦慶斗(現日本ハム)とバッテリーを組み、打者としては甲子園初本塁打も記録。秋には近畿大会で優勝し、明治神宮大会では広陵との決勝で2本塁打を放つなど攻守に渡る活躍で優勝に貢献した。

この代の大阪桐蔭が一気にギアを上げたのはこの大会からだ。

その中軸であった松尾汐恩は3年春のセンバツでは準決勝の國學院久我山戦、近江との決勝戦でいずれも本塁打を放つなど打率.353、2本塁打、4打点の成績でチームを牽引し、優勝。夏の選手権では聖望学園との2回戦で2打席連続本塁打を放って、OBの平田良介(元中日)、森友哉(現オリックス)、藤原恭大らに並ぶ史上10人目の甲子園大会通算5本塁打を記録。同大会では準々決勝で下関国際に敗れるも、大会後のU-18ワールドカップの日本代表に選出、銅メダルに輝くと同時に大会ベストナインを受賞。同年のドラフトで横浜DeNAから1位指名を受けてプロ入りした。

「僕の一番の強み」は観察力

あらためて紹介しておくと、松尾汐恩の持ち味は走攻守の3拍子を備えたポテンシャルにある。178cm、78kg(高校時代)の細身ながら、打ってはキレのあるシャープなスイングで、「インパクトの強さがある」(DeNA・安部建輝スカウト)ため、鋭い打球を飛ばすことができる。

守っては遠投110mの強肩で二塁送球は1秒87を記録。スローイングにブレはなく「捕球も足が動き、(球の)正面に入れる」(中日・八木智哉スカウト)フットワークでバント処理や捕ってから投げるまでの速さも極上だ。さらには「打者の傾向を見ながら伏線を張り、一打席ごとにリードしている」(中日・八木スカウト)うえに「投手の特性を活かす配球ができる」(日本ハム・大渕隆スカウト部長)。松尾汐恩自身も「僕の一番の強み」というのが観察力だ。その実、試合の中でマスク越しに投手や相手打者の仕草を見るだけではなく、普段の学校生活から先生やクラスメートらの行動を意識して観察していたというから面白い。それはたとえば「あの人、次どんな動きをするのかなぁ…とかを考えながら見ていると楽しいんです」というから、先天的な持ち味といったところか。そしてその目配りが、試合での気づきにつながるのだとも。

たとえばU-18の時、当時高松商の浅野翔吾(現巨人)が調子を落とした際、「翔吾が調子いい時は、もっとこんな感じで構えてたで」と助言。自身が塁に出れば相手の守備位置を確認するのはもちろん、塁上にいる味方選手にも注意事項を指示するなど、状況判断も自然にできる。そういう部分においてもこの選手は捕手向きなのだ。

走っては50m、6秒2の俊足で状況判断に優れる積極的な走塁も松尾汐恩のウリ。

「男前やなぁ」と三浦大介監督が唸れば、「捕手として見栄えがする」(ソフトバンク・永井智浩編成育成本部兼スカウト部部長)のも松尾汐恩のウリである。

ルーキーイヤーはイースタンの“三冠”

その松尾汐恩、1年目の昨季は高卒ルーキーながら春季キャンプでは一軍スタート。とはいえ、オープン戦にも3試合出場したが3月6日には二軍に合流、1年目の下地作りのスタートだったが、5月29日のロッテ戦で大阪桐蔭の先輩でもある澤田圭佑の初球を左翼席に運ぶ“プロ初本塁打”を記録して以降は打撃も上向き、交流戦明けの6月23日には一軍登録され、わずか2日間ながら“上”の舞台を体感。練習時、相川亮二コーチからは「キャッチャーとしての動きとか、そのあたりは変わってきた。キャンプの時とは別人になった」という声も聞かれた。

結局、試合には出場できないまま二軍へと舞い戻ったが松尾汐恩はその後も好調をキープ、7月にはフレッシュオールスターに出場し、9月にはイースタンでリーグ12人目のサイクル安打を達成した。

こうして終えたルーキーイヤーの成績はイースタンで104試合に出場し打率.277、7本塁打、51打点を記録。打率はリーグ5位、放った安打数「95」は同2位という好成績で、ファームの努力賞、ビッグホープ賞、そしてリーグ特別賞の“三冠”を受賞。

とはいえ、捕手というポジションはとにもかくにも経験がものをいう。そういう点からして24年シーズン、いきなりの大ブレイクは難しいのかも知れないが、動けて、打てて、インサイドワークも面白くて華のあるキャッチャーなど、そうそう登場するものではない。台頭が、ひたすらに待ち遠しい。

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