バックストーリーで物語に深みを与える
物語本編ではないバックストーリーが、キャラクターを生きたものにし、作品に奥行きが生まれます。
人には必ず生い立ちがあります。このことはキャラクターを創作するうえで、決して忘れてはいけません。たとえフィクションの物語であっても、キャラクターに生い立ち、いわばバックストーリーを設けて過去を描くと、読者にとってリアルに感情移入できるキャラクターを造成することができます。
キャラクターをつくる際は、このバックストーリーを基準にして、キャラクターがとらないであろう行動を明確にしておく必要があります。バックストーリーでの経験は、キャラクターの現在の性格を形づくる主要な要素になるからです。そのため、キャラクターの性格からくる思考や行動は、バックストーリーに基づいている必要があります。バックストーリーに反した、とらないであろう行動を明確に理解して、気をつけていれば、読者が違和感を抱く矛盾をなくすことができ、キャラクターの行動に一貫性を持たせることができるのです。
バックストーリーはキャラクターを生きたものにするだけでなく、物語を支え、説得力を増す役割があります。
たとえば、あるひとつの事件を躍起になって解決しようとしている探偵の物語で、その事件の犯人と思われる人物が過去に探偵の家族を殺害して実刑判決を受けていたというバックストーリーがあるとします。これを本編で語れば、探偵が今の事件に躍起になっている理由がはっきりと読者に伝わり、物語の完成度がぐっと高まります。
またバックストーリーにも、P24〜25で解説した緩急をつけるのがポイントです。ただ明るい、ただ暗い生い立ちにするのではなく、幸せの絶頂にいたのにある出来事で絶望の淵に落とされたというふうに、落差をつけることで物語としての面白さが生まれます。
バックストーリーは現在に影響する
バックストーリー:過去に父親が失踪している
現在のキャラクター:父を探すため探偵に
キャラクターには必ず過去、生い立ちがある。これがバックストーリーであり、現在のキャラクターの性格に影響している。そのため、キャラクターはバックストーリーに基づいた行動をとっている必要がある。
バックストーリー:過去に科学研究者が失踪した
現在の出来事:研究者の失踪した場所で事件発生
現在起こっている出来事にもバックストーリーは影響を及ぼしている。この部分を作中で描くことで、物語がより強固なものとなり、読者に感動を与える深みが出る。
バックストーリーにも緩急が大切
恋人と婚約!幸せに浸る主人公
結婚式前日に恋人が失踪……絶望する主人公
物語本編だけでなくバックストーリーにも緩急をつけると、キャラクターの抱える過去やトラウマの深さを効果的に演出できる。
【出典】『テクニックでセンスを超える! プロが教えるマンガネーム』著:佐藤ヒロシ
【書籍情報】
『テクニックでセンスを超える!プロが教えるマンガネーム』
著:佐藤ヒロシ
マンガを描く上で、アイデアやイメージを形にするのは難しく、面白さを伝えるためにはネームが必要です。ネームは、コマ割りや構図、キャラクターの配置などを具体的に示す設計図であり、作品の完成度を高めるために何度も修正を繰り返します。本書では、ネームの作り方と素晴らしい作品になるためのポイントを解説し、実際のネーム添削も紹介。ネームを描くことが、面白いマンガを作成する第一歩です。マンガネームの書き方に悩んでいる方にぜひ読んでいただきたいおすすめの一冊です。
公開日:2024.06.12