パターン別で見るプロットのつくり方 ファンタジー編
独自の世界観を伝えるときに重要なのは、マンガの作者と読者の間で必要な情報が共有されていることです。
世界観と人間ドラマがマンガの面白さを決める
ファンタジーマンガで重要となるのが、舞台となる世界観の設定とその説明です。
現代とは違う世界のルールや法則、そして、そこに生きる者たちの価値観など、その世界独特のありかたについて、一貫性を持って設定し、ストーリーのなかで描く必要があります。ここで、なぜそのような世界になったのかを簡潔に説明できる一貫性があれば、作品はよりよいものになります。ただし、説明をすべてストーリーの最初の段階で一気に行おうとすれば覚えることが多くなり、読者のストレスになってしまいます。重要な根幹の部分は序盤でしっかりと説明・描写しつつ、その場面で必要になる必要な情報を小出しに、ストーリー全体のテンポが失われないように読者に伝えましょう。
また、魔法などのエネルギーを万能の小道具として無制限に使っていたり、敵に倒されそうになった瞬間にいきなり覚えた魔法を使って逆転― ―、などと都合よくファンタジー設定を使っていたりすると、「あの場面も魔法を使えば解決したのでは」と、読者からツッコミが入りがちで、作品全体の説得力も薄れてしまいます。 魔法は万能ではなく、何かしらの経緯を必要とする、という設定をすると、その要素での駆け引きが生まれ、読者にいい意味の緊張感を与えることができます。作者と読者、両方の納得とワクワクがあって、素晴らしい世界観が生み出されるのです。
一貫性ある世界観が読者に没入感を与える
ファンタジーの世界観を構築する場合、現実とは異なる世界がなぜ存在するのか、その世界ではどのような生活をしているのか、つながりを持って考える。着想は現実にあるものから得るのがいい。たとえば砂漠を舞台にした場合、実際の砂漠地帯の住居を基に、建築などを考えとリアリティが増す。逆に、寒い地方の建築では一貫性を失い、世界観がブレてしまう。
世界観の設定と人間ドラマの両立が重要
×世界観は壮大だが人間ドラマが希薄
マンガの中心はあくまで人間関係が織りなすドラマ。そのため内容が薄くなってしまう。
×展開される人間ドラマに世界観が活かされていない
読者は舞台が現実でもいいのではないか、と考えてしまい、話も難解になりがち。
○壮大な世界観とかみ合った重厚な人間ドラマ
その世界ならではの設定が活かされ、そのマンガでしか描けない人間ドラマが生まれる。
ファンタジーマンガは、独特の世界観を表現することばかりに意識が向きますが、世界が変わってもストーリーの中心になるのはキャラクター達の人間関係なので、人と人の関わり合いや対立の描写をおろそかにしてはいけません。そこに生きる人々・キャラクター同士の関係性はしっかりと描くようにしましょう。
【出典】『テクニックでセンスを超える! プロが教えるマンガネーム』著:佐藤ヒロシ
【書籍情報】
『テクニックでセンスを超える!プロが教えるマンガネーム』
著:佐藤ヒロシ
マンガを描く上で、アイデアやイメージを形にするのは難しく、面白さを伝えるためにはネームが必要です。ネームは、コマ割りや構図、キャラクターの配置などを具体的に示す設計図であり、作品の完成度を高めるために何度も修正を繰り返します。本書では、ネームの作り方と素晴らしい作品になるためのポイントを解説し、実際のネーム添削も紹介。ネームを描くことが、面白いマンガを作成する第一歩です。マンガネームの書き方に悩んでいる方にぜひ読んでいただきたいおすすめの一冊です。
公開日:2024.06.15