がつプロ変化球大事典〜シンカー編〜
変化の仕方から握り、歴史、使い手で全て教えます!
知っているようで知らない、奥深き変化球の世界を「がっつり!」掘り下げる。今もなお進化を続け、多くの投手が「最大の武器」として活用するシンカーだ!
『シンカー』の歴史と現在地
『近年は速く、鋭く曲がる「ハードシンカー」が主流』
1900年代、アメリカのルーブ・フォスターという投手が投げていた「フェイドアウェイ」という変化球が原型とされている。厳密にはこのボールは日本でいう「スクリュー」の原型とされているが、実は現在に至るまで、スクリューとシンカーの明確な差別化はされていない。一般的には左投手の投げるシンカーを「スクリュー」と呼ぶことが多いが、例えば大野豊、山本昌、石川雅規のように、左投手でもシンカーとスクリューを使い分けている投手もいる。この場合、よりストレートの軌道に近く、曲がりが鋭いものを「シンカー」、球速も遅く、やや浮き上がってから大きく曲がるものを「スクリュー」と差別化することが多いが、例えば潮崎哲也の投げていたシンカーはその定義でいうと明らかに「スクリュー」である。メジャーでは日本よりもシンカーとスクリューが明確に差別化されており、いわゆる球速の速いタイプのものは「ハードシンカー」と呼ばれる。
1990年代頃を境にメジャーではこのハードシンカーが隆盛を極め、元ヤンキースの王建民のように、投球のほとんどがシンカーという「シンカーボーラー」が現在も多数存在する。彼らは球速150キロ前後のシンカーを打者のコーナーに投げ分け、内野ゴロの山を築く。フライを打たれる確率が極端に低く、球数も少ないため、多くの球団から重宝される。日本では1980年代以降、潮崎や高津臣吾の投げる、「スクリュー」に近いシンカーがまず流行した。その軌道から、サイドスローやアンダースローの投手が武器とする傾向が多く、当時はオーバースローでシンカーを投げる投手はほとんどいなかった。しかし近年、メジャー流の「速いシンカー=ハードシンカー」を武器にする投手が日本にも増え始め、オーバースローでもシンカーを決め球にする投手は年々増している。日本球界で、シンカーは今なお、進化を続けている。
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公開日:2020.06.11