思春期の女子が父親を嫌う理由
自身と近い遺伝子の男性を嫌う
小さい頃は父親になついていた女の子が、思春期に入ってからは父親を避けるようになる……とくに匂いが「臭い」と言って嫌う、という話を聞いたことがあると思います。世の中のお父さん方にはつらい話ですが、これは遺伝子から考えるとごく自然な流れなのです。
その原因となっているのがHLAという遺伝子。これは免疫に関わる遺伝子で、外来の病原体に対する抗原と関係があります。このHLAは人それぞれ種類が違い、異なるHLAの持ち主同士が子をつくることで、子はより幅広い病原体と戦える免疫を獲得しやすくなります。
そんな理由から、女性は本能的に自身とはなるべくタイプの違うHLAの持ち主を求めます。このとき、親から受け継いだHLAが基準となるため、父親はHLAのタイプが非常に近い男性として嫌悪の対象となるのです。
ひとつ、海外で興味深い研究があります。男性が何日か着たTシャツの匂いを女性に嗅いでもらったところ、肉親男性よりも血縁関係のない男性のTシャツのほうを好ましいと感じたそうです。非血縁者の男性の匂いに惹かれ、肉親男性の匂いを臭いと感じて嫌うのは、子孫を残すための女性の本能といえるでしょう。娘が父親の匂いを嫌い始めたら、女性としての生命力の表われと思って温かく見守ってやりましょう。
「女性は肉親男性の匂いを嫌う」という実験結果
男性が何日か着たTシャツを、誰のものか伏せて女性に匂いを嗅いでもらう実験をしたところ、女性は非血縁者のTシャツの匂いを好ましいと感じる結果になりました。父親や男きょうだいのTシャツの匂いは「臭い」と嫌悪の対象でした。
「HLA」の匂いを女性は嗅ぎ分ける
女性が男性の匂いを嗅ぎ分けるカギとなっているのがHLAという遺伝子。HLAのタイプが遠い相手のほうが、生まれてくる子に免疫の多様性がつきやすいのです。そのため、HLAのタイプが近い肉親男性の匂いを本能的に嫌うのです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話』著:安藤 寿康
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話』
監修:安藤寿康
≪累計300万部突破!『眠れなくなるほど面白い図解シリーズ』≫
環境や努力は遺伝に勝てない!?行動遺伝学者が語る“遺伝のタブー”を図解でわかりやすく解説!【遺伝の話】
「生まれ持った才能」「容姿の格差」「親ガチャ」…誰しもなんとなく気が付いて受け入れているものの、表立ってその違いを口にすることはタブーとされがちな遺伝の話。
近年、インターネット上でもさまざま議論がなされ、「遺伝」に関する話題は注目を浴びています。
一般的に遺伝といえば、身長や体重、髪の毛や瞳の色といった身体的特徴が親から子に受け継がれることを指し、遺伝学とはこういった特徴が次世代にどのように引き継がれるかを研究する学問です。その中でも特に、遺伝と環境が人の成長にどう影響しているかを解明していく分野を「行動遺伝学」といいます。
本書では、行動遺伝学の第一人者である著者が遺伝にまつわるさまざまな気になるギモンをわかりやすく解説します。
「親から遺伝するもの、しないものって何?」「そもそも遺伝ってどういうしくみ?」という基本的な知識から、「収入と遺伝は関係がある?」「容姿の差による格差ってどれくらい?」「遺伝で決まっているから環境や努力ではどうにもならない?」「生まれで9割決まっているって本当?」など、漠然と言われているけど誰も正直に答えてくれないような話題まで、徹底解説!
誰しも避けて通れない遺伝の真実を、わかりやすく、そして正しく知ることができる一冊です。
公開日:2024.11.17