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『伝授』第2回 パドックで見える“欠点の種類と基準”

Text:弥永明郎

今回はパドックでわかる馬の欠点について、個人的な見解を伝えたいと思う。
前提として俺から言わせれば馬は“欠点”だらけ。欠点のない馬なんてほぼいない。
ただ、“欠点”ばかりでも“欠陥”じゃなかったら許している。なんとなくニュアンスは伝わるか?
では、これから“欠点”や“欠陥”に関してのおおまかな基準について書いていこう。

体幹のブレを見極める
立ち姿じゃ分からないが、後ろから馬が歩いている姿をパドックで見てほしい。
その時に馬体の軸が縦にブレている馬なら問題ないが、軸が横にブレている馬はダメ。これは“体幹が弱い”証拠。ブレを感じるのはたいてい馬体の下の方だけど、たまにお尻までブレている馬がいる。そうなると出走してくるのは論外というレべル。
軸のブレを見分けるのは一番簡単で、競馬を始めて間もない人でも見分けがつく。
まずGⅠレベルの強い馬を一度見てもらって、そのしっかりとした体幹をベースに他の馬と比較すればわかるようになる。そんなに難しいことではない。

ただ、まれに軸がブレているのに強い馬もいる。
具体的には2021年のNHKマイルカップ、毎日王冠など重賞3勝を挙げたシュネルマイスター。
この馬は右がすごく弱くて軸ブレの状態で走っていたが、その欠点を補うだけの能力があった。それでも体幹がしっかりしていないから、スタートから急かせる競馬ができなかった。まあ、これは例外的であって普通は走らないけどな。

シュネルマイスター

輸送負けや夏負けを見分けるには?
”輸送に負けている”という表現が正しいのかわからないが、輸送で体力を使ってしまった馬は馬体を見るとわかる。
まず、あばらが出てくる。なぜあばらが出るかというと肉が下に落ちて皮膚がたるむように見える。脂肪の割合は競走馬ではある程度一定しているし、輸送で筋肉自体がなくなるということはありえないけれど、どうしても見た感じがそうなってしまう。
夏負けに関しても、今年は猛暑だったから夏負けしているケースというのは多かった。
見て一番わかりやすいのは、脱水症状で痙攣している馬。これは結構目に付くので、ぜひ来年の夏場には気にしてパドックを見てほしい。

馬は動物だから汗をかく
馬体重の“数字”にも惑わされるな
発汗を気にする人が少なくないが、馬だって動物なので暑い日は当然汗をかく。普段汗をかいていないのにかいているのは、精神的に何かあったのかもしれないけど、基本的には前日とか当日入りでも朝早い時間に競馬場に着いているのに、急にパドックに来てから初めて汗をかくのか? パドックに出てくる前に、体重を測ったりするエリアで30~40分歩いているから、そりゃ汗くらいかくだろうよ。なので、俺は発汗に関しては全く気にしていない。むしろ、真夏なのに全く汗をかいていない場合は「え?」とは思うけどな。
また、馬体重の“増減の数字”には惑わされないでほしい。その馬の正解の馬体重を知っているのか?
馬体重は出走するステージによって違うし、馬を見て俺はこの馬はこのくらいという感覚で判断している。数字は必要ない。

その日だけ踏み込めていない場合は問題あり
踏み込みに関して言えば、リアルスティール産駒は“俺の目には”悪く見える。でも、走る馬を多く出しているよな?
踏み込みは骨の形や、体の芯の強弱で形が変わる。だから踏み込みが悪くても、それはその馬の持っているもので、いつも踏み込めていないのに急に今日だけ踏み込めるというのはない。
ただし、逆にいつも踏み込めているのに、今日に限って踏み込めないというのは、腰に疲れが出ているとか、どこかしらに問題があると判断できる。
そういう事情がなく、いつも踏み込めていないなら、そういう馬なので気にする必要はない。それで成績の良い馬はたくさんいる。

リアルスティールの代表産駒・フォーエバーヤング

これまで欠点の見方についてばかり述べてきたが、最後に俺が狙うタイプの馬を伝えよう。
条件によって違うのだが、例えば府中の芝マイルくらいでスローペースと読んだら、首が10時の方向に伸びるような屈伸力のある馬を狙うのが良い。
いつもは違うが、今回だけ10時の方に動く馬がいる。これはよほど体の悪いところがない。それはほとんど来る。
これがハイペースになると思えばまた狙う馬は変わってくる。なぜかというと、それはタフな馬を狙うことになるから。タフかどうかはパドックで分かることではなく、競馬を何回か使ってわかることだから。

10時の方向を向いているタイプ

10時の方向を向いていないタイプ

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