【野球ごはん⑮】暑熱対策について≪令和版≫


暑熱環境時の運動について
暑い日の練習は、寒い日に比べてキツく感じることが多いと思います。

(図1)は、環境温が40℃、20℃、3℃の条件下で自転車エルゴメータ運動を疲労困憊まで行った際の運動時間を調べたものです。図のとおり、環境温40℃では運動継続時間が短くなります。

(図2)は、環境温が40℃、20℃、3℃の運動終了時の直腸温、筋温および運動継続時間を示したものです。こちらでも、外気温40℃の場合は直腸温・筋温が早く上昇し、運動継続時間が短くなっています。

これらのことから、暑熱環境時に運動を継続するためには、上昇した体温を下げるための工夫が必要であることが分かります。手段としては2つあります。運動前・運動中・休憩中・運動後に①体の外から冷やす方法、②体の中から冷やす方法があります。
体の外から冷やす方法
ひとつ目は「体の外から冷やす方法」です。
(図3)は、過去に公表された研究論文を基にした身体冷却方法の冷却効率を示しています。冷水浴や水道水の散布など、さまざまな方法があります。

最近、球場で運動前や運動中に広がってきている方法のひとつに「手のひらを冷やす方法」があります。手のひらには「動静脈吻合」と呼ばれる血管があり、ここを冷やすことで体温が早く下がることが分かっています(図4、図5)。


この動静脈吻合は、手のひらのほかに足の裏や顔にもあります。例えば、以下のような方法があります。①氷水の入ったバケツやクーラーボックスに手を浸ける、②冷えたペットボトルを握る、③氷水で冷やした軍手を手にはめて顔に当てる。
また、これらの冷却方法は複数を組み合わせることで、より効果的に体温を下げることができます。例として、首に氷水を入れた氷のうを当て、霧吹きで体に水をかけ、ハンディファンで風を送る方法(例1)などがあります。

体の中から冷やす方法
もうひとつは「体の中から冷やす方法」です。
2008年の北京オリンピックは非常に暑い環境下で行われました。各国の選手団は、クーリングベストなど、さまざまな暑熱対策を行っていました。その中でオーストラリアチームは「アイススラリー」を開発しました。アイススラリーとは、簡単に言えばスポーツドリンクをフローズン状にした飲み物です。水やスポーツドリンクなどの「液体だけ」よりも、「クラッシュアイスのような小さな氷」を一緒に摂取した方が、体温を下げやすく、運動中の体温上昇を抑えやすいことが研究で分かりました(図6)。

現在では、日本でもスーパーや通販で、スポーツドリンクをフローズン状にした商品が販売されています。しかし、これらの商品が手に入らない場合は、次のような工夫が考えられます。①飲み物にクラッシュアイス(ひとくちサイズの氷)を入れて一緒に飲む、②シャーベットや氷菓(アイス)を摂取する、③凍らせた果物を利用するなど。
これらの方法に関する正式な研究は見つけられませんでしたが、食品メーカーが行った実証実験では、サウナ入浴後に常温水と氷菓をとった時の新譜体温の変化を比較すると、氷菓を食べた方が、体温の上昇をおさえられたとの報告があります。私自身も、暑い時期に氷菓を食べたり、クラッシュアイス入りの飲み物を飲んだりすると涼しく感じます。ぜひ、皆さんも試してみてください。

運動後の冷水浴について
選手から「暑い日の運動後、食事がとり辛い」という相談を受けることがあります。運動後に高体温のままだと食欲が出にくく、食事をとりづらくなります。
身体冷却方法の中で、手軽で効果が早いのは冷水浴ではないでしょうか。スポーツニュースなどで、アスリートがトレーニング後にプールなどで冷水浴を行っている様子を見かけることがあります。運動後に冷水浴を行うことで体温が下がり、食欲が回復し、食事がとりやすくなります。
私がサポートしていたチームでは、水泳部にお願いしてプールを利用させてもらっていました。プールが利用できない場合でも、銭湯やスポーツジムの水風呂、自宅の湯舟に水を溜めて活用することができると思います。
参考
オフィスのミカタhttps://officenomikata.jp/news/16331/(2025年6月)
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