SPORTS COLUMN
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「スポーツツーリズム」って?

Text:飯塚さき

スポーツ記者・飯塚さきの
スポーツ ここが知りたい!―It’s All About Sports!― 第8回

あらゆるスポーツ現場を飛び回るフリー記者・飯塚さきが、今回は旅とスポーツとを掛け合わせた「スポーツツーリズム」について紹介します。スポーツツーリズムとは、いったいどのような概念なのでしょうか? 一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構代表理事である、早稲田大学スポーツ科学学術院の原田宗彦先生にお話を伺いました。

スポーツと旅行の融合
「スポーツツーリズム」って?

皆さんは、「スポーツツーリズム」という言葉をご存じでしょうか? これは、スポーツの観戦や参加を目的として地域を訪れたり、地域資源とスポーツを融合した観光を楽しんだりするツーリズムスタイルのことを指します。例えば、野球やサッカー、バスケットボールなど、プロスポーツを見に行く人は多いでしょう。熱心なファンであれば、アウェイでの試合観戦のために、遠方へ足を運ぶこともあります。これは、「スポーツを目的とした旅行」であり、まさにスポーツツーリズムの1つです。

アメリカの大学スポーツ(バスケット)観戦

また、観戦だけでなく、自らスポーツをしに行くための旅行もあります。マラソンやトレッキングの大会に出るため、またはサーフィンやスキーなどのシーズンスポーツを楽しむために、地方を訪れることもあるでしょう。

スポーツ観戦や大会参加などを目的とした人を地域に呼び込むために、町が大会を誘致したり、既存のイベントを拡大したりして地域活性化を図る動きが、近年増えています。スポーツツーリズムとは、こうした「スポーツで人を動かす仕組みづくり」のことなのです。

一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構は、スポーツツーリズムの司令塔として、全国各地で地域スポーツコミッションの設立支援を行い、スポーツで町に人を呼び込む働きかけをしているそうです。例えば、2011年に設立された「さいたまスポーツコミッション」では、これまで250以上のスポーツイベントを誘致しており、その経済効果は385億円と推計されています。さらに、札幌市には「さっぽろグローバルスポーツコミッション」があり、2030年の冬季オリンピック招致に向かって、さまざまなスポーツイベントの誘致を行っています。

同機構の代表理事を務める、早稲田大学スポーツ科学学術院の原田宗彦先生に、活動の背景を伺いました。

「こうした動きが全国に広まってきた理由の一つは、20年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、合宿やトレーニングキャンプの誘致をするためです。もう一つは、少子高齢化や人口減少に伴う地域の危機感が増してきたことにあります。大きなアリーナがなくても、広大な自然があるような地方の町では、むしろその自然を生かして、トレイルランやリバーラフティングといったスポーツイベントを行うことで、地域を活気づけることができるのです」

近年、我が国には外国からも多くの観光客が訪れるようになりました。19年ラグビーワールドカップ、20年東京オリンピック・パラリンピック、21年関西ワールドマスターズと、国際的なスポーツの大会が立て続けに日本で行われることで、スポーツツーリズムの熱がさらに上がることが期待されています。

アメリカのレンタサイクル。向こうでは普及していて、運動しながら遠出が楽しめる

ユニークな取り組みと
スポーツツーリズムの展望

地方には、現在までに多くのユニークな取り組みがあります。例えば、北海道には「国際スポーツ雪かき選手権」という大会があります。実際の道路の幅を広げるために雪かきを行い、制限時間などを設けてスポーツ化しているものです。

また、熊本県には「イデベンチャー」という、用水路をカヤックで下る体験イベントや、青森県には「スポーツ流鏑馬」なんかもあります。どれも、地域の社会課題を解決するために考えられたスポーツイベントで、全国から多くの人が訪れているそうです。

全国各地で多くの成功例が報告されているスポーツツーリズム。今後さらに拡大していくことが予想されますが、原田先生の描く未来とは、どのようなものなのでしょうか。

「人を集め得る神社仏閣や立派なアリーナなどがあるところは限られていますが、海や山、雪などといった自然に恵まれた地域は多くあります。各地域の資源を生かしたあらゆるスポーツで、国全体を盛り上げられたらと思っています。今年は、スポーツツーリストの比率を、全体の2割、約70万人にまで引き上げたい。海外のスポーツコミッションとも連携し、この活動を広げていきたいと考えています」

旅とスポーツ。アクティブな方であれば、この2つのコラボレーションはワクワクするものなのではないでしょうか。今後は皆さんも、旅行先でプロスポーツ観戦に行く、地域のスポーツイベントに参加するなど、観光に加えてスポーツの要素も盛り込んでみてはいかがですか?


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