長い歴史と無数の人たちの語りでつくられた
日本の神話は『古事記』『日本書紀』に記されたものがもっとも古く、まとまっています。『古事記』はその序文によると、天武天皇の命により稗ひえ田だの阿礼が暗記していた神話・歴史を、太安万侶が書き記し、712(和わ銅どう5)年に元明天皇に献上されたものとされます。一方、『日本書紀』は、720(養よう老ろう4)年に舎人親王が天武天皇に献上したものです。では、稗田阿礼や太安万侶、舎人親王などが『古事記』『日本書紀』に書かれている神話をつくったのでしょうか。いいえ、それは違います。本としてまとめる際に多少の改変は行なったとは思われますが、創作はしていません。彼らは当時伝わっていた神話を収集・編纂*しただけです。
では、神話はいつ、誰によってつくられたのでしょうか。 残念ながら、これについてはわからないと言わなければなりません。神話は長い歴史と無数の人たちの語りを経て形成されたからです。たとえば、『古事記』『日本書紀』のニニギ(邇に
邇に芸ぎの命みこと)やヒコホホデミ(日子穂穂手見の命)といった天皇家の祖先神のことは、天皇家に古くから伝わったものだと考えられます。しかし、その中の海な ま鼠こ の口が裂けている理由や、一ひと尋ひろ鰐わに(鮫さめ)に「サチモチの神」という名がつけられた由来などは、漁民の間で語られていた神話ではないかと思われます。このほかにも地名の由来、自然現象を司る神のこと、穀物を実らせる神のことなど、さまざま場所や人たちの間で成立した神話が混じり合って『古事記』『日本書紀』の神話ができています。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 神道』
著:渋谷申博
「神道には教義がないって、本当なの?」「八百万の神々の中で一番偉いのは、誰?」「鳥はいないのに、なぜ鳥居というの?」 神道の起源から日本の神様、開運神社のご利益まで楽しくわかる! 古代から伝えられてきた日本の心──神道。その奥深い世界を57項目の素朴な疑問からズバリ解説しす。
公開日:2021.06.10