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勝てるテニス選手になる為の数字から見る予測&判断の重要性とは!?【新装版 勝てる!理系なテニス】

数字から見る予測&判断の重要性

●松尾衛/理論物理学者

「テニスの不等式」の話は、すごく衝撃でした。これこそが、知りたかったことです。とくに予測の話。これは、すごい話が聞けました。普通、予測というと、相手の情報から導き出そうとしますよね。それが、まさか自分の打つときから予測が始まるなんて、今まで聞いたこともありませんでした。

この予測と判断の訓練を週に一度、半年でも続ければかなり違いが出てくるように思えます。スクールではゲーム練習が最後のほうに少しだけあるので、そこで試したいですね。自分の当たりが「気持ちいい」から、とりあえず2歩くらい前に出ていこうか、とか。ボールがどう飛ぶかはともかく、気持ちよかったからとりあえず前に出とけ。それだけでだいぶ雰囲気が変わるように思えます。そうすると自然と足が動いているものですよね。

気持ちいい、悪いというのはかなり根源的なものです。それに合わせて足を2、3歩連動させるというのは、うまくいけばものすごい武器になる。まったく無意識レベルで動くようになるといいですよね。

私が出場した市民大会にも、田中プロが話すようなベテランプレーヤーがいました。50代で、もうそれほど動きも速くないのに、なぜか相手の打つ所、打つ所にいるのです。初め見たときは「なんでかなぁ?」と理由がわからなかったのですが、いま思えば、まさに予測力と判断力に長けていたのですね。

上達=試合に勝ちたい、ということになると、ただ打ち方がうまくなるだけでは、原理的に無理だと感じていたのです。この予測と判断について、数値的な面から見てみたいと思います。コートサイズを単純化するために、自コートと相手コートを1:1の比率で考えます。時速100キロ前後のボールを例にすると、時速100キロで動く物体は、1秒間に約30メートル動きます。テニスコートのタテの長さは約24メートル。すると、ある程度のスピードを有したボールであれば、ベースラインからベースラインを約1秒で飛ぶわけです。では、1秒のあいだに自分はどれだけ移動できるのか?

足のピッチ(回転)は1秒間に4〜5回転。背が高い人、足の長い人、そうではない人、みんなだいたい同じです。すると、1回転あたり約1メートル分、足は動くので、1秒間に4〜5メートルしか移動できない計算となるわけです。テニスコートのヨコ幅は約10メートル。ということは、予測・判断がなければ、ストロークであってもすべてのボールを動きだけで処理することは不可能だとわかります。

そして、テニスの場合、ボールの所まで動けば終わりではない。打つ準備が必要。なので、対戦相手からボールが飛んでくる1秒間に、移動だけでなく、打つ準備をしておくことが求められる。これだけで、予測・判断が機能していなければ、ボールを自由自在に操り、対戦相手を追い詰めることなどできないことがわかるわけです。

実はコートのタテ幅のほうが長いのですが、プレーしているとヨコ幅のほうが長く感じるものです。私の場合はそもそも不摂生だったので、コートの端までも無理しなければ移動できないくらいでしたから、もちろん鍛えなければいけなかった。それができるレベルになったとき、拾える量が増えてくる。ところが、そのときは予測も判断もなにもなくて、ただ反応するだけです。飛んできたボールに対して一生懸命なだけでした。

走る速さ、動きの速さは、練習すれば爆発的に伸びるものではありません。オリンピックの100メートル走を見てもわかるとおり、死に物狂いのトレーニングを何年も積んだとしても、コンマ数秒速くなるか、ならないかの世界です。ということは、明らかに動きの速さではなく、ボールの打点位置に早く到達する方法が必要であることがわかります。

世界のトッププレーヤーが、なぜあれほど簡単にボールを打てるのか? 予測して判断して動き、常にボールに対して先回りをしているからなのですね。想定外の厳しいボールや、対戦相手にチャンスボールを与えてしまったとき以外は、いつも目の前に出された球出しボールを打つような余裕があって、だからミスが少ないのです。

相手の癖を知って読むというのは、なんとなくわかる範囲にあります。ストレートのほうに7割くらい張っておこうかな、とか。ところが衝撃だったのが、予測が自分の打った感触のところから始まっていることです。これまでの練習や試合では、自分が打った瞬間の脳みそは思考停止状態。ただ一生懸命に打って、「ボールがうまく飛んだなぁ」くらい。ですから今回、自分がボールを打つときから対戦相手が打つときまで、やるべき優先順位が見えた気がします。

テニスはよく、「足ニス」といわれます。ですが、行き先がわからないのに足は動かせない。どうやって行き先を決めるのかが知りたいわけです。行き先が読めていれば、多少緩慢な動きでも間に合うわけですからね。むやみに足を動かせば、無駄な体力を使うだけです。だから、判断と予測で、正確に目的地を特定する。そのあとで足を動かす。順番が逆だとわかりました。

『新装版 勝てる!理系なテニス 物理で証明する9割のプレイヤーが間違えている〝その常識〟!』
著者:元オリンピック&日本代表コーチ 田中信弥
理論物理学者 松尾衛

元オリンピック&日本代表テニスコーチと気鋭の物理学者による常識を覆すテニス理論、指南書。5万人超のウィークエンドプレーヤーが納得した現場理論を、理論物理学で証明した、すべてのプレーヤーのテニスを躍進させる書。「サービズは上から下に打つのは間違い」「テニスは不等式でできている」「身体は動かさずに打つ」など、常識破り、型破りな指導法で結果を出し続ける田中コーチの独自のテニス理論を、理学博士の松尾氏が自ら体験で得たプレーを「物理屋」の観点で解説・証明する―――まったく新しいテニスの本! 

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