目立たないけど超重要!エルロンが飛行機を旋回させる仕組みとは【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】

補助翼(エルロン)の大切な役割

低速用エルロンと高速用エルロンの違い

鳥の真似をしないで、飛行機が方向を変える方法は、主翼に小さな動く翼を付けることで解決しました。その小さな翼で主翼の一部のキャンバを変え、揚力の大きさを加減することにより自由に傾けられます。小さな補助の翼がエルロンです。例えば操縦桿を右に回すと、下図のように左のエルロンが下がり、右のエルロンが上がります。このように左右逆のキャンバをつくることにより、左翼の揚力が大きくなって、操縦桿を右に回した量に合わせて、ローリング・モーメントが発生し、右にバンクできるのです。

なお大型ジェット旅客機は、強度上の問題から翼端付近にある低速用と、翼中央付近にある高速用のエルロンの2つに分かれています。強度の弱い翼端近くにある低速用エルロンは、文字通り低速時のみに作動するエルロンです。

操縦桿を引くと、エレベーターが上に動き、水平尾翼のキャンバの変化により、下向きの揚力が大きくなります。その結果、重心位置を中心に、上向きのピッチング・モーメントが作用し、操縦桿を引いた量に合わせて、機首が上に向きます。操縦桿を押すと、その逆になります。

ところで、燃料消費にともなって、重心位置の変動に対応する舵の効きを求めると、大きな舵面が必要になってしまいます。しかし水平尾翼を動かして、迎え角を変えれば、エレベーターは小さな翼面で ピッチ・コントロールに専念できます。それがスタビライザー・トリムと いう装置で、大型ジェット旅客機の多くがこの方式を採用しています。水平尾翼の迎え角を少し変えるだけで、微妙なピッチング・モーメントのコントロールができ、重心位置の変化にも対応できるのです。

操縦桿を右に回すと

飛行機を後ろから見た場合、何もしない状態での圧力分布

操縦桿を右に回すと…左エルロンが下がり右エルロンが上がるので圧力分布の変化が起きて時計回りのモーメントが発生し右にバンクします。

図は、低速用エルロンの例ですが、実際には高速用エルロンも同じように動いています。低速用エルロンのように翼端近くにあると重心位置から距離があるので小さな力でも大きなモーメントが得られる利点があります。しかし、高速になると強度の弱い翼端に大きな負担となってしまいます。そのため高速飛行になると低速用エルロンは作動しません

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』著:中村 寛治

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』
著:中村 寛治

『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』書影
【Amazonで購入する】

「飛行機はなぜ、どうやって空を飛べるのか」という基本から、最新の知識、身近な航空雑学まで、飛行機の魅力をたっぷり図解でわかりやすく教える一冊。

この記事のCategory

インフォテキストが入ります