『巨樹・巨木図鑑』の著者、小山洋二さんに伺ったインタビュー。第1回では、巨木巡りの集大成としての本づくりにまつわるお話をお聞きしました。今回は、本書刊行に際して、新たに撮り下ろした巨木撮影旅のエピソードについてのお話です。
取材・文:別府優希 小山洋二さん近影:天野憲仁(日本文芸社)
週5日は仕事、休日の2日は巨木を撮影に行く日々が始まった。
小山さんは会社の代表を務める経営者でもある。仕事が終わるとすぐに車を飛ばして目的地へ。長時間の運転後、場合によっては到着後すぐに巨木探しの登山が始まる。
とりわけ県全体の面積が大きい東北地方をいかに攻略するかが問題だった。小山さんの地元・愛知から2日間の休日で気軽に行ける距離ではない。
そこで小山さんは2023年7月に長期休暇をとり、「東北巨木巡礼の旅」をスタートさせた。
奇跡の連続「木が雨を止めてくれている」
「予報では降水確率が高い日が多い日程でした。実際、巨木がある山の麓に着くまでは土砂降り。そんな日々が続くのに、なぜか毎回、巨木に辿り着くと雨がぴたりと止む。晴れ男なんていう次元じゃないほどでした。『木が雨を止めてくれている』と思ってしまったぐらい、天候に恵まれました」
撮影中は秒単位で雨が止むというミラクル。
本書の撮影のために170~180本の巨木を訪ねたが、撮影中は1本も雨が降らなかったのだそう。巨木に愛されているようだ。
雨上がりは絶好の撮影チャンス
「巨木を目の前にして、雨が降り出すことは過去に何度もありました。そんな時は『迎え入れてもらえなかったなあ』とがっくりします。雨が降ると雨粒に邪魔をされてピントが合いませんから、いい写真は撮れません」
「けれど、この本の撮影では1本も雨が降らなかったんです! 雨が止んでくれたのも奇跡でしたし、撮影前に雨が降ると木の色がしっかり出て、緑がより濃い色になるのでありがたかったですね」
カメラを趣味にしている人ならよくわかると思うが、天候は画像の仕上がりを大きく左右する。加えて、大きな被写体は撮影がとても難しい。
「幹周りが10mを超えている大型の巨木は非常に撮りにくいです。でも、そういう巨木に出会った時が、逆におもしろいんです」
「全形を画角に入れてしまうと圧縮されてしまうし、太さを表現しようとすると全く画角に入らない。なんとか太さや巨木感がわかるように撮ってはいますが、実際、『まだもっと巨木感が伝わる写真が撮れるはず』と思う木がたくさんあるので、リベンジ撮影は続けますよ!」
巨木撮影にベストなタイミングは?
私たちが巨木を訪ねるベストなタイミングを教えていただいた。
「巨木が最も美しく、力強く神聖に見えるのは、晴れた日の早朝です。とくに太陽が昇る前から昇った直後の時間がとても美しいです。樹種にもよりますが、個人的には新緑がきれいな初夏がおすすめです。撮影目的で訪れるときは前述したように雨上がりがベストですが、このタイミングを狙うのはなかなか難しいと思います」
小山さんが愛用しているアイテムをご紹介。巨木巡りの参考にしてください。
GPS ジオグラフィカ(アプリ)■巨木探しをするために山に深く入る時用
Anker Nano Power Bank■充電器。充電ケーブルがないので使いやすい
カメラグッズ/PLフィルター■葉っぱの反射が消えて緑が鮮やかに写る
ワイヤレスリモコン■自撮り用
次回は、巨木巡りを始めるようになったきっかけやその魅力についてのお話しです。
【書誌情報】
書名:巨樹・巨木図鑑
著者:小山洋二
【著者紹介】
小山洋二
1977年生まれ。巨木カメラマンとして20年、仕事の傍ら日本全国へ巨木を求め飛び回る。未知の巨木を探して、近年は屋久島・富山へ何度も訪れている。本業はインターネットショップ株式会社HAPPYJOINT代表取締役を務める。
ホームページ:『巨木の世界』https://bigtrees.life/
公開日:2024.12.09