仮想現実のほうが大事になる!?
10代がスマホ依存に陥りやすい思春期やその前後は、親からの自立や反発が見られる時期です。それまで素直だった子でも、人の指示や意見に耳を傾けません。一方で、友人との繋がりは強く求めるようになり、「メッセージはすぐ返信しなければ」「既読スルーはありえない」という気持ちが、ときに強迫観念といってもよいほど高まります。自分の書き込みに対する既読スルーにも不安を抱き、食事中も何度もスマホをチェックするなど、精神的に不安定になりがちです。これは大人も同じことで、通勤途中で投稿したコメントの反応、「いいね」がどれほど集まったか気になって仕事に集中できない、ミーティングの最中でもスマホをつい見てしまうなど、例を挙げるとキリがありません。
スマホ依存になってしまう原因は、共通して何らかの心の隙間が考えられます。「人間関係に悩んでいる」「自分を認めてくれる人がいない」「いつでも人と繋がっていないと不安になる」といった満たされない心を、実生活より生き生きと過ごせる仮想現実で埋めようとするからです。それでも、本人に「自分ではやめられない」という自覚があれば受診に繋がり、様々な方法でオフラインの時間を増やすことが可能です。たとえ通院が途切れても、日常生活に潜むのめり込みやすい場面を避け続けることで、確実に改善に近付けます。
スマホ依存ってどんなもの?
SNSなどで気の合う人と気軽に交流できるのもスマホの魅力ですが、睡眠を削り食事や入浴中も手放せないほど依存してしまうことがあります。
承認欲求を満たしたい若い女性に多い
自分のSNSやコメントが注目されて称賛が集まると承認欲求が満たされ、日常生活では味わえないような幸福感や満足感を得られる。
コメントやいいねが気になってしまう
ネットの承認欲求の裏には疎外恐怖があり、コミュニケーションに過剰な気を使う。コメントやいいねは常にチェックして返信する。
ゲームへの依存からスマホ依存になることも
ゲームの攻略法を知りたくて様々な動画や攻略サイトを見始め、気付いたら毎日何時間もスマホに没頭するようになるケースも。
多いときはフォロワーが2000人に
10代女性
小学生のときは携帯ゲーム機で人気アニメのゲームをしたり、家のPCでアニメ動画や小説サイトを観たりしていた。3~6時間使うこともあったため、しばしば親から注意を受ける。中学時代は部活で忙しく、ゲームやPCの使用時間は短くなった。
高校生になってスマホを買ってもらいSNSを始める。最初は見るだけだったが、つぶやきやコメントをするようになると、寝る時間を削ってまで交流するように。多いときはフォロワーが2000人になり、睡眠時間が3時間程度になることもあった。明らかに成績が下がり、親に注意をされると暴力も。自分ではやめられないと自覚して受診。
アプリを削除するなどの対処行動や、夜は親にスマホを渡して使用しないなどの努力をする。部活が忙しくなってスマホの使用時間も減ったため、通院を終了した。
ゲームを取り上げられるとキレて物に当たることや、課金するために家族の財布からお金を盗むことがしばしばあり、親に連れられて受診。
出典:『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』大石 雅之
【書誌情報】
『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』
大石 雅之 著
特定の物質や行動をやめたくてもやめられない病の「依存症」。スマートフォンの普及や時代の変化にともない、依存症の種類も多様化しました。「スマホ依存」「ゲーム障害」などの言葉は、テレビやインターネットのニュースで目にする機会も増え、社会問題として注目されています。依存症は一度症状が出てしまうと完治が難しい病気です。本書はその依存症について具体例を交えながら、依存する人としない人の違いや依存症の進行の仕方、依存症が起こるメカニズムなどを、メンタルマネジメントや環境、生活習慣の観点から図解でわかりやすく解説。
公開日:2023.08.15