体は汗と皮脂で汚れている
石鹸は身近なものなので、もう少し取り上げてみましょう。石鹸の「石」は、文字通り石なので固い物質、「鹸」は、塩水が固まったアルカリの結晶とか、灰をした水の意味です。石鹸は、安土桃山時代に南蛮貿易によって渡来し、当初は灰汁を麦粉で固めて使っていたといいます。江戸時代にはポルトガル語を語源とする「シャボン」の名で使われ、明治に入ると漢語重視によって造語「石鹸」と名付けられました。参考までに現在の石鹸製造工程図を載せておきます(図1)。さて、体の汚れの70%は汗です。汗はシャワーを浴びるだけでも落ちます。残りの30%が皮脂や古い角質などの汚れで、石鹸の洗浄力で落とせます(図2)。皮膚は、脂分を含んでいるので界面活性剤の親油性(親油基)の部分が脂の周りを取り囲み、皮膚から剥がして脂と結合する。外側は親水性(親水基)なので水に溶けやすくなって流れ落とすという仕組みです。新型コロナウイルスなどの感染予防に手指の洗浄が有効なのは、ウイルスが脂質の膜で覆われているので界面活性剤がウイルスの膜を壊し、感染力を弱めるためです。
ところで、石鹸には固形石鹸と液体石鹸があります。固形石鹸は、動植物油脂に水酸化ナトリウムを反応させて固形化する。水に溶けにくいので石鹸成分が多く、洗う力が強い。液体石鹸は、動物油脂に水酸化カリウムを反応させる。水に溶けやすく、泡立ちがよい。それぞれに特徴があるということですね。洗浄する際は、泡立てることがポイントです。きめの細かい泡の立て方には、柔らかいボディタオルや泡立てネットがオススメ。きめの細かい泡なら、ゴシゴシ擦る必要はありません。やさしく泡で洗うだkで皮脂は落とせます。注意すべきは熱過ぎるシャワー。肌の乾燥につながるのです。皮脂が溶ける温度は約30℃なので、ぬるめのお湯でも皮脂を洗い流せます。また、肌の弱い人が皮脂を落とし過ぎるのはダメですし、洗浄後に乾燥が強くなるようなものは避けなければなりません。石鹸は、とても有用なものですが、何事にも程度があります。適切な使用を心がけることですね。
現在の化粧石鹸の製造工程(連続中和法)
①原料
②油脂を圧搾
③油脂から脂肪酸とグリセリンに分解
④純度を高める蒸留
⑤中和
⑥生地を乾燥
⑦香料や色素を配合
⑧機械で混錬
⑨棒状に押出し
⑩切断して成型
⑪型打ち
⑫包装
体の汚れと落とし方
汗の汚れ70%・・・汗はシャワーで落とす
皮脂などの汚れ30%・・・皮脂は石鹸などで落とす
体は汗と皮脂で汚れている
シャボンは安土桃山時代に西洋から伝来したのだの。文政7年(1824年)に蘭学者の字田川榛斎と養子の榕菴がシャボンを医薬品としてつくっているのう。洗濯石鹸は横浜の堤磯右衛門が明治6年(1873年)に日本初の石鹸製造所を開いて商売用につくった。翌年には化粧石鹸も製造したというぞ。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』野村 義宏・澄田 夢久
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』
野村 義宏 監修・著/澄田 夢久 著
宇宙や地球に存在するあらゆる物質について知る学問が「化学」。人はその歴史の始めから、化学と出合うことで多くのことを学び、生活や技術を進歩・進化させてきました。ゆえに、身近な日常生活はもとより最新技術にかかわる不思議なことや疑問はすべて化学で解明できるのです。化学的な発見・発明の歴史から、生活日用品、衣食住、医学の進化までやさしく解明する1冊!
公開日:2023.09.06