誕生を父に隠され、妖精たちに守られ匿われて成長した
我が子を恐れる父クロノスから兄弟たちを救ったゼウスですが、なぜ彼だけが無事に成長することができたのか。それは母レアの機転と、祖母ガイアをはじめ多くの者たちの協力のたまものでした。
すでに5人の子どもたちを、夫であるクロノスに丸呑みにされていたレアは「今度生む子こそ無事に育てたい」と願っていました。
レアは、母であるガイアに助けを求めます。ガイアは「夜のうちに、こっそりクレタ島で出産しなさい。そして産着(うぶぎ) で石を包んでクロノスに渡しなさい」と入れ知恵をしました。
言葉通りにしたレアから「今度生まれた子どもです」と産着に包まれた塊を渡されたクロノスは、石を呑み込んで安心していました。
生まれた子は、クレタ島で山羊であるアマルティア(ニンフ)の乳や蜂蜜(はちみつ)を与えられて育ちます。ガイアは精霊クレテスを集めてにぎやかに踊らせ、赤ちゃんの泣き声がクロノスの耳に届かないよう配慮しました。
こうして父に見つかることなく成長したゼウスは、立派な大人となって父のもとに出向き、父に吐き薬を飲ませたのです。
まずはゼウスの代わりに呑まれた石、そしてゼウスの腹の中で成長した兄姉が、呑み込まれたときと逆の順で吐き出されました。
*ニンフ:若く美しい女性の姿をした清らかな存在。精霊や妖精のようなもので、山や森など自然の中にいる。クレタ島でゼウスを大切に育てた。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』
著者:鈴木悠介 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
早稲田大学卒業。予備校講師(世界史)。現在は各地でのライブ授業に加え、YouTubeの予備校「ただよび」やオンライン予備校「学びエイド」などの映像配信授業でも活躍中。また教育系YouTuberとしての顔も持ち、YouTube「すずゆうチャンネル」ではさまざまな世界史コンテンツを発信している。
恋多き神々の王・ゼウス、神々を従える最強の神・トール、4本腕の荒ぶる神・シヴァ。 個性豊かで魅力たっぷり! 世界の神様のキャラクターを大解説! ギリシャ神話、北欧神話、ケルト神話、エジプト神話、インド神話、メソアメリカ神話。人気抜群の神々と英雄たち32神(人)の性格とエピソードを、イラストと図を交え、わかりやすく紹介します。神々たちの愛憎ドラマのギリシャ神話、世界樹の下、終末に向かって突き進む北欧神話、妖精も登場するケルト神話……。神々と怪物、巨人、英雄たちが繰り広げる壮大な戦いや奇想天外な天地創造の物語など、想像を絶する神話のストーリーと世界観もくわしく解説しました。世界の神々を知ると、映画、小説、テレビドラマ、マンガ、ゲームがもっと楽しくなります!
公開日:2022.09.03