なぜ日本のお金は「円」と呼ばれるのか?
なぜ、日本の貨幣単位は「円」なのでしょうか。1871年(明治4年)5月に明治政府は「新貨条例」を制定し、江戸時代の通貨単位「両」から「円」に改めたものの、「円」という呼び名の経緯ははっきりしていません。貨幣の形を円形にしたから「円」とか、香港で流通していた通貨の呼び名を模したとか、メキシコから流入した円形銀貨を「洋円」と呼んでいたからだとか、中国の「元」の呼び名に倣ったとか、諸説あるのです。
ところで、この「新貨条例」では、江戸時代に使われていた金貨、銀貨、銭貨などの3貨の四進法(金貨=小判1枚が一両で、1両は4分=16朱)を欧米に倣って十進法に改めました。そして、「金本位制」を採用し、純金1500㎎を1円とし、「円」の100分の1を補助通貨として「銭」と呼び、「銭」の10分の1を「厘」としました。
しかし、明治政府は、発足当初から多額の不換紙幣の発行や1877年の西南戦争の戦費調達で財政難に陥り、インフレにも悩まされていました。しかも、当時のアジアでは、メキシコから流入した銀貨を中心とする「銀本位制」が主流で、「銀」を主体とする貿易取引が多く、日本もそれに従っていたものの、やがて銀の価格が下落し、日本はますます物価上昇に苦しめられます。
1881年に松方正義が大蔵卿に就任し、緊縮財政や増税を断行、不換紙幣を回収し、82年に日本銀行を設立、84年から兌換銀行券条例を施行し、ようやく「円」の通貨体制は整えられます。ただし、日本は金が乏しく、1897年の日清戦争勝利で賠償金を獲得し、そこでようやく1円を純金750㎎(従来の半分)で兌換するという本格的な「金本位制」を確立するに至るのでした。
出典:眠れなくなるほど面白い 図解 経済とお金の話
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 経済とお金の話』
神樹 兵輔 著
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公開日:2022.02.15