エルサレムの壊滅を目撃した預言者
エレミヤは、ダビデとソロモンによって築かれた栄光のイスラエル王国が砂の城のように崩れ去っていくのを目の当たりにした預言者でした。
エレミヤ書によれば、彼は母の胎内に宿る以前から預言者になるべく神に定められていたといいます。しかし、預言者として活動を始めたのは紀元前627年のことでした。
その時、神はエレミヤの口に触れてこう言われました。「北から災いが襲いかかる、この地に住む者すべてに」。
すでに北のイスラエル王国は紀元前722年にアッシリアのために滅亡していました。その後、アッシリアは分離独立した新バビロニアによって滅ぼされますが、今度はその脅威がユダ王国に及ぶというのです。
こうした悲劇に見舞われるのは民が真の信仰を忘れたためと神は言い、それに気づかせるために「*わたしの僕(しもべ)バビロンの王ネブカドレツァル」を派遣するのだとエレミヤに告げました。
そして、警告は現実のものとなり、エルサレムは侵略され、長老・祭司をはじめとして多くの人が連れ去られました。
しかし、そのような事態に陥っても人々は楽観的な偽預言にすがろうとします。これに対しエレミヤは、ネブカドレツァルがエルサレムを占領し、家々を焼くだろうと告げました。
こうしたエレミヤを役人たちは逮捕し殺そうとしますが、預言通りエルサレムは攻め落とされ、王宮も神殿も破壊されてしまうのです。
王子や貴族は殺され、目をつぶされた王と多くの民はバビロンに連行されました。これをバビロン捕囚(ほしゅう)といいます。
用語解説 *わたしの僕 言うまでもなくネブカドレツァルは異教徒であるが、神の意思を伝えるための道具とされたため、このように呼ばれたのである。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 聖書』
著者:渋谷伸博 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
1960年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。宗教史研究家。よみうりカルチャーなどで神話をテーマとした講座も開講している。著書多数。近著に『一生に一度は参拝したい全国の神社めぐり』『聖地鉄道めぐり』『神々だけに許された地 秘境神社めぐり』『歴史さんぽ東京の神社・お寺めぐり』(いずれもジー・ビー)、『あなたの知らない般若心経』(宮坂宥洪監修、洋泉社新書)、『諸国神社 一宮・二宮・三宮』(山川出版社)などがある。
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公開日:2022.06.24