突然に始まり、突然に消えた文明の正体は未だにわからない。
いわゆるインダス文明は、どういう文明なのか、未だにわからない。不明のままである。
二十世紀初頭、ハラッパー遺跡とモヘンジョダーロ遺跡の発掘によって、規則正しく組み立てられた都市文明の全容が明らかにされ、その後、現在に至るまでの間、遺跡の発見事例は600事例に及び、発掘されたのはインドが96、パキスタンが47、アフガニスタンが7、合計147遺跡にも及ぶが、未だに不明である。
しかし、突然に現れ、忽然(こつぜん)と消えた都市文明と表現された常套句はいま、広大な版図に点在する遺跡の調査が進むにつれ、必ずしもそうではないことが判明してきた。モヘンジョダーロを除いて、すべての都市が最初から完成された都市として現れるということだ。
つまり、モヘンジョダーロだけが唯一、途中から計画都市に変更された形跡があり、しかも、一番下の無遺物層までの間、12メートルもの文化堆積層があったのだ。残念ながら、地下水位の上昇で発掘はできないが、可能性を暗示する。一日も早く、その実態を解明して欲しい。
モヘンジョダーロはどこから来たのか?少なくともモヘンジョダーロでは、他の古代文明では当然見られる神殿や宮殿、王墓などが見られないが、城壁と市街地はきちんと正確に区分され、何度か洪水で破壊されているが、その都度、寸分違わず、再建された。当初の都市計画案は厳格に守られたのであった。
そして、どこへ行ったのか? このモヘンジョダーロから北東方向へ進出し、すでに先ハラッパー文化によって開発の進んでいた地域、すなわち、インダス流域に拡散して行ったのであろう。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界史』
著:鈴木 旭 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
昭和22年6月、山形県天童市に生を受ける。法政大学第一文学部中退。地理学、史学専攻。高校が電子工業高校だったためか、理工系的発想で史学を論じる。手始めに佐治芳彦氏と共に「超古代文化論」で縄文文化論を再構成し、独自のピラミッド研究から環太平洋学会に所属して黒又山(秋田県)の総合調査を実施する。以後、環太平洋諸国諸地域を踏査。G・ハンコック氏と共に与那国島(沖縄県)の海底遺跡調査。新発見で話題となる。本業の歴史ノンフイクション作家として、「歴史群像」(学研)創刊に携わって以来、「歴史読本」(新人物往来社)、「歴史街道」(PHP)、「歴史法廷」(世界文化社)、「歴史eye」(日本文芸社)で精力的に執筆、活躍し、『うつけ信長』で「第1回歴史群像大賞」を受賞。「面白いほどよくわかる」シリーズ『日本史』『世界史』『戦国史』『古代日本史』はロングセラーとなる(すべて日本文芸社)。他に『明治維新とは何だったのか?』(日本時事評論社)、『本間光丘』(ダイヤモンド社)など著書多数。歴史コメンテーターとして各種テレビ番組にも出演。幅広い知識と広い視野に立った史論が度々話題となる。NPO法人八潮ハーモニー理事長として地域文化活動でも活躍中。行動する歴史作家である。
いま地球規模の「人類史」という観点からも注目され、一方で一般教養、知識としても人気が高い「世界史」。世界規模の歴史を学ぶ上で大切なのは、歴史を流れとして捉えること、歴史にも原因と結果があり「なぜ」そこに至ることになったのか大もとの理由を理解すること、そして見ただけで忘れないようにビジュアルで視覚的覚えること。本書ではさらにアジアや日本の歴史とその役割にも重点を置き、最新の発見や新しい史論を取り入れた、世界史の学び直しにも、入門にも最適な知的好奇心を満足させる1冊。
公開日:2021.11.05