出産など家族の健康を守る神様だから
植村花菜さんの楽曲「トイレの神様」のヒットで、トイレにも神様がいることを知られた人も多いのではないでしょうか。しかし、かつては多くの家でトイレの神( 厠神x便所神)が祀られていました。そして、歌にあったように、とても大切にされていました。植村さんの歌では、トイレをきれいにしていると美人になれるとしていましたが、一般の信仰では、よい子が授かるとしているところが多いようです。また、出産の際に妊婦を守る神様としても信仰されてきました。かつては出産は家で行なうものであったので、家で祀られる神様の中でも穢を厭ない厠神に無事出産を祈ったのです。出産はどうしても出血を伴ってしまいますが、日本の多くの神様は血を穢れとして嫌う傾向があるのです。
こうしたことから、新生児が最初に礼拝するのも厠神だとされました。これを雪隠参りといい、生後3日目頃に行ないました。排便は健康に直結していますから、そのトイレを守る神様は家族の健康を守ると考えられたのでしょう。地域によっては、大おお晦みそ日か の夜にトイレの前にお膳を供え、一家でその前に並んで家長が「お世話になりました」と挨拶*をしたそうです。家の中には、トイレ以外にも神様を祀る場所があります。たとえば、台所には竈かまどの神や火の神が祀られました。また、納戸(衣類や米などをしまっておく部屋)にも納戸の神が祀られました。神棚に祀られる氏神は家長が祀るものとされていましたが、こうした家の神は主婦が祀るものとされていました。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 神道』
著:渋谷申博
「神道には教義がないって、本当なの?」「八百万の神々の中で一番偉いのは、誰?」「鳥はいないのに、なぜ鳥居というの?」 神道の起源から日本の神様、開運神社のご利益まで楽しくわかる! 古代から伝えられてきた日本の心──神道。その奥深い世界を57項目の素朴な疑問からズバリ解説しす。
公開日:2021.06.20
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外国生まれの神様でも神社で祀られてるって本当?