海を統治する神と航海の神の違いがある
『古事記』『日本書紀』の神話にはワタツミ・住吉神・宗像神という海の神が登場します。これらの神は、今も神社で祀られて信仰されています。この3種の神様はどう違うのでしょうか。簡単に言うと、ワタツミは海を統治する神、住吉神と宗像神は航海を守ってくれる神様です。ワタツミと住吉神はイザナキが海で禊をした時に生まれました。
海の底にもぐった時にソコツワタツミ(底津綿津見神)とソコツツノオ(底筒之男命)、海中でナカツワタツミ(中津綿津見神)とナカツツノオ(中筒之男命)、海面でウワツワタツミ(上津綿津見神)とウワツツノオ(表筒之男命)が生まれたとされます。一方、宗像神はアマテラスとスサノオがうけいという占いをした時に生まれました。
ワタツミは海を統治している神様と考えていいでしょう。それは、ヒコホホデミ(山幸彦)がなくした兄の釣り針を求めてワタツミの宮を訪れた時、海の魚たちをすべて集めて釣針のことを尋ねていることからもわかります。これに対して、住吉神は神功皇后が新羅に遠征した時にこれを助けた神様なので、航海を守るといっても軍船の守護が中心だったと思われます。
宗像神は誕生した時に、アマテラスから「お前たち3柱の神は道の中(海上交通の要所)に下って、天孫(天皇のこと)を助け、天孫に祀られなさい」と言われていることからもわかるように、海上交通、とくに海外航路の安全を守る神様だということがわかります。遣唐使も宗像大社を参拝してから海を渡りました。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 神道』監/渋谷申博
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 神道』
著:渋谷 申博
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公開日:2023.01.22