本殿や拝殿を必要としない神社がある
結論から先にいってしまえば、本殿がない神社、拝殿がない神社、いずれもあります。神社の規模が小さいため拝殿がつくれないとか、経営難のために本殿が再建できないといったことではなく、由緒ある規模の大きな神社でありながら本殿や拝殿をもたない神社があるのです。本殿をもたない神社の代表例が、奈良の大神神社と埼玉の金鑚神社です。拝殿をもたない神社では伊勢神宮があげられます。
大神神社や金鑚神社が本殿をもたない理由は明快です。どちらも御神体が山なのです。本殿は御祭神の神霊が宿るご神体を奉安するための建物ですが、山を社殿に入れるわけにはいきませんし、山を覆うような建物も建てられませんので、本殿はないわけです。これは聖なる山に向かって祭祀を行なっていた時代の信仰を残しているものと思われます。かつてはこのような神社が日本の各地にありました。
境内に神霊を招いていれば、いつでも直接お祀りができますし、山を登って祭祀を行なう必要もないからです。また、聖なる山に対する信仰の変化も背景にあるでしょう。一方、拝殿をもたない神社は、神社は神様のための場所という考え方に基づいていると思われます。建物の中から礼拝するのは畏れ多いというわけです。実は仏教伝来当時のお寺でも、金堂(本殿を安置する建物)は仏様だけの場所で、法要を行なう僧以外は堂の外から礼拝していました。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 神道』監/渋谷申博
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 神道』
著:渋谷 申博
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公開日:2023.01.24