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花の女王はバラ。では雑草の女王は?【植物の話】

Text:稲垣栄洋

庭や畑の嫌われ者、メヒシバ

雑草という言葉には、打たれ強くへこたれない強い植物というイメージがあります。しかし実際は、ほかの植物との競争に弱く、森林のように競争に強い植物が多いところには生えません。

強い植物のいない、よく踏まれる道端や、街路樹の植え込みの中、草刈りされる公園や田畑といった逆境で生きていくしかありません。

雑草に限らず、植物にとって一番大切なことは、花を咲かせて種子を残すことです。立ち上がるより、踏まれたまま姿勢を低くし、地べたを這いながら花を咲かせる、それが逆境の中でしなやかに、したたかに生きる雑草の姿です。

日本の主要な雑草で除草の対象になっているのが、「雑草の女王」とも称されるメヒシバ(雌日芝)です。名前を聞いても「あーあれね」とはいかないかもしれません。日本の植物学の父といわれる牧野富太郎博士の有名な言葉によれば、「雑草という名の植物はない」わけですから、どんな雑草にも立派な名前があります。メヒシバは道端、農道、花壇、コンクリートの隙間、全国いたるところで見ることのできるごく普通の雑草ですから、写真を見れば「なーんだ、これか」ということになります。

メヒシバは、1個体で万単位の花「小穂(しょうすい)」をつけ、突然変異の可能性が高いのです。これはどんな環境にも適応できる能力を獲得する可能性があるということを意味します。

さらに種子の増え方は、自殖(自家受粉)がメインですから、自分だけで子孫を増やせます。また切断されても、節から再生し、性によらない栄養繁殖で増え、とても繁殖力の強い雑草です。このようなことから、メヒシバはどこにでも生える能力を持つのではないかと推測されています。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
植物学者・静岡大学教授。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。


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読めば、「ふだん見かけるあの植物に、そんな秘密が!?」と驚くはず。
「花の女王はバラ、では雑草の女王は?」
「なぜ夏の木陰はヒンヤリするのか?」
「昆虫と植物は必ずギブ&テイクの関係なのか?」
「植物は数学を知っている?」
「じつは、植物によって光合成のしかたが違う?」
など身近な疑問から、花粉を運ばせるための昆虫だましテクニック、一歩踏み込んだ光合成のしくみまでわかりやすく紹介します。

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