カトリックとプロテスタントでは異なる秘蹟
キリスト教、特にカトリックには、さまざまな決めごとや儀式があります。そのバックグラウンドとなっているのが、「秘蹟(ひせき)」(サクラメント)という考えかたです。
キリスト教徒は、さまざまな儀式によって神に出会い、それぞれの秘蹟による恩寵(おんちょう)を受け、神に救われるとされています。
たとえば、キリスト教に入信するには、まずキリスト教の信仰を告白し、教会に入会する必要がありますが、この入信儀式が「洗礼(せんれい)」です。カトリックの場合、幼児期に両親の意思によって行なわれるのが幼児洗礼で、幼児洗礼を受けた子どもは、成人して自覚的に信仰を持った段階で改めて信仰告白式(しんこうこくはくしき)(堅信=けんしん)を行ない、ここで一人前のキリスト教徒と認められることになります。
教会で行なわれる儀式のなかで最も重要なものと位置づけられているのがミサ(プロテスタントでは礼拝=れいはい)です。毎日曜日、教会に信者が集まり、聖書の朗読や説教、祈り、讃美歌(さんびか)の合唱などが行なわれます。
特にカトリックでは、イエスの肉体と血のシンボルであるパンとぶどう酒を信者に施(ほどこす)ことが、ミサのなかで大きな意味を持ちます。これが聖体拝領(せいたいはいりょう)(聖餐式=せいさんしき)という秘蹟です。このようなミサの儀式は、特にカトリックではその進めかたが厳密に決められていますが、プロテスタントの場合はかなり柔軟に行なわれています。
なおプロテスタントでは、左にある七つの秘蹟のうち、洗礼と聖体拝受の二つだけを重要な秘蹟としています。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の宗教』
監修:星川啓慈 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
1956年生まれ。1984年、筑波大学大学院哲学・思想研究科博士課程単位取得退学。1990年、日本宗教学会賞受賞。現在、大正大学文学部教授。博士(文学)。専門は宗教学・宗教哲学。主な著書に、『言語ゲームとしての宗教』(勁草書房、1997年)、『宗教と〈他〉なるもの』(春秋社、2011年)、『宗教哲学論考』(明石書店、2017年)、『増補 宗教者ウィトゲンシュタイン』(法藏館、2020年)など。
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公開日:2022.04.09