ミステリー作品の常連[トリカブトの毒]【眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話】

ミステリー作品の常連[トリカブトの毒]
創作で有名な毒植物
トリカブトの名は、花のかたちが雅楽奏者に使われる冠の「鳥兜」に似ていることに由来します。トリカブトの持つ毒は、小説などのミステリー作品に登場する最もポピュラーな毒物でもあり、その名を聞けばほとんどの人が危険な植物だとピンとくるのではないでしょうか。
ところが名前は知っていても、その葉をイメージできる人はほとんどいないはず。なんとなく思い浮かぶ人でも気をつけてほしいのが、トリカブトにはそっくりさんが多いこと。秋に咲く紫の花は個性的で間違える人はいませんが、葉だけ見ると似ている植物がかなりあります。たとえば山菜のニリンソウやモミジガサ、漢方薬などに使われるヨモギ、薬草として胃腸薬に使われるゲンノショウコなどです。
こうした植物と間違えてトリカブトを口にすると大変です。「アコニチン」という神経毒が体を麻痺させ、腹痛やけいれん、呼吸困難を引き起こして死に至ることもあります。花粉や蜜も含めて草全体に毒があるため、ハチミツを介して中毒を起こす危険もあるとか。
トリカブトの毒は症状が出るまで10~20分と早く、解毒剤も存在しないため、誤食したときはなんとか吐き出させるか胃を洗浄するしか対処法はありません。また、毒は皮膚からも吸収されるため、安易に手に取ることも禁物です。
毒草の代表格 トリカブト
【全体に毒がある】
→ どの部位をとっても有毒だが、塊根の乾燥品の毒を減弱したものは鳥頭や附子として漢方薬に配合される。
【毒矢にも使われた】
→ アイヌ民族は矢にトリカブトの根から採った毒を塗り、ヒグマなどの獲物を狩っていた。
【葉っぱの特徴】
→ トリカブトの葉の表面は光沢があり、裏面にうぶ毛はない。これに対し、ヨモギの葉の裏面は白く、うぶ毛がある。
日本「三大有毒植物」は?
日本三大有毒植物
日本三大有毒植物といわれるドクゼリ・ドクウツギ・トリカブトは、いずれも神経毒の成分を持っているため、誤って口にすると命にかかわるので注意が必要。
ドクゼリ
セリより大きいが、セリのような香りはない。毒は皮膚からも吸収される。
ドクウツギ
甘みを持つ美味しそうな赤い実をつけるが、かなりの猛毒を持っている。
トリカブト
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話』監修:船山 信次
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 毒の話』
監修:船山 信次
日常生活のなかで、毒性のあるものを誤食したり、毒を持つ生物に触れたりして中毒症状が出たというケースは少なくありません。
スイセンやキノコの誤食など毎年のように発生しており、毒は非常に身近な存在です。
本書はまず毒とはなにかという毒の定義や作用などの基礎を化学や薬学の知識がない人にもわかりやすく解説。
例えば「地球上で最凶の毒は?」「青酸カリって舐めても大丈夫?」など、気になる毒の雑学とともに紹介します。
また、毒を持つハチ、カエル、クラゲなどの生き物やスイセン、アジサイ、トリカブト、カエンタケなどの植物やキノコ、アスベスト、ダイオキシン、火山ガスなど環境系の毒、
依存度が高いコカイン、危険ドラック、覚せい剤などの麻薬……etc.
人体に影響を及ぼすあらゆる毒を収録!
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