パターン別で見るプロットのつくり方 バトル編
どうして主人公は戦うのか、なぜ主人公でなければいけないのか、その理由をつくってあげましょう。
バトルマンガは「戦う理由」をはっきりさせる
①「なぜ主人公は戦い続けるのか」をはっきりさせる
〈例〉
・ボクシングで誰よりも強くなりたいから。
・奴隷で勝たなければ殺されるから。
・優勝して『願いを叶える宝』を手に入れたいから。
なぜ主人公はそのストーリーのなかで戦い続けているのか、はっきりとした理由を提示する。理由もなく他人を傷つけるだけの主人公に読者は感情移入できないうえに、戦い続ける動機がなければ、長期の連載ではキャラクターの行動がブレてしまいがち。また、単に「みんなのために戦う」という理由はヒロイックになりすぎて、読者が共感しづらい。
②「なぜ、主人公がその相手と戦うのか」をはっきりとさせる
〈例〉
・仲間が全員倒れて主人公しかいないから。
・師匠と友人の命を奪った因縁の相手だから。
・(相手が主人公より弱い場合)決闘を申し込まれ、それを受けたから。
なぜその相手と戦うのが主人公なのか、その理由付けもしっかりと行う。強すぎる相手に挑むには、大切な仲間を逃がすといった絶対に譲れないものを設定する。逆に自分より弱い相手と戦うときには、相手の覚悟を受け取ったという相手の譲れないものを尊重すると、主人公に対するストレスは溜まりにくい。
バトルマンガを描く際には、キャラクターたちが戦っている理由付けをしっかりと行うことが重要になります。特に長くフォーカスの当たる主人公には、「なぜ主人公は戦い続けるのか」という、ストーリーの軸となる戦う動機と、「なぜ、主人公がその相手と戦わなければいけないのか」という、今その相手と戦う理由を必ず設定しましょう。
理由もないまま主人公が強い敵と戦えば、読者は「主人公が本当に戦う必要があるのか、相手の見極めもできないのか」と感じてしまいます。逆に、抵抗の手段もない善良な相手を一方的に攻撃するのであれば、主人公が弱い者いじめをしている構図になり、バトルの緊張感とともに主人公に対する親近感などのプラスの感情が失われてしまいがちです。
また、主人公が戦う動機に関しては、「みんなのために」といったヒロイックな動機にしすぎると、共感を呼びづらいキャラクターになってしまいます。マンガのなかのキャラクターとはいえひとりの人間なので、動機はより個人的で親近感を覚えるような、共感のしやすいものがいいでしょう。
ピュロスの勝利で重厚なストーリーに
想定読者の年齢層が高めのバトルマンガなら、「勝ったけど、失うものが多い」というピュロスの勝利をマンガに組み込むことで、「戦いはなにも生みださない」「そもそも、なぜ私たちは戦うのか」といった、より読者に考えさせるテーマを取り入れることができる。
想定する読者の年齢層が高めの場合には、「得るものが少ない勝利」「失うものが多すぎた勝利」を意味する「ピュロスの勝利」をストーリーに組みこむことで、物語のメッセージ性が増します。キャラクターにつらい勝利の経験を与え、戦うことにむなしさを感じ、戦う意味・意義を考えさせせるのです。そうすると、作品のテーマとして「なぜ戦うのか」「戦いの勝利で得られるものは何か」というところにまで踏みこむことができます。ただし、ストーリーが複雑になりがちで、作品のテーマも重くなるので少年向けマンガで使うときには注意が必要です。
【出典】『テクニックでセンスを超える! プロが教えるマンガネーム』著:佐藤ヒロシ
【書籍情報】
『テクニックでセンスを超える!プロが教えるマンガネーム』
著:佐藤ヒロシ
マンガを描く上で、アイデアやイメージを形にするのは難しく、面白さを伝えるためにはネームが必要です。ネームは、コマ割りや構図、キャラクターの配置などを具体的に示す設計図であり、作品の完成度を高めるために何度も修正を繰り返します。本書では、ネームの作り方と素晴らしい作品になるためのポイントを解説し、実際のネーム添削も紹介。ネームを描くことが、面白いマンガを作成する第一歩です。マンガネームの書き方に悩んでいる方にぜひ読んでいただきたいおすすめの一冊です。
公開日:2024.06.14