セリフとシルエットだけでも伝わるように意識する
作者が想像している以上に、キャラクターの描き分けは大胆に、極端に表現したほうが読者に伝わります。
セリフでキャラクターの個性を引き出す
個性の描き分けのゴールは、読者がぱっと見たときに瞬時にキャラクターを見分けられる状態です。そのためにはP.54〜55で解説した年齢や体格の描き分けも欠かせませんが、それだけでは十分とはいえません。
そこでひとつの指標となるのがキャラクターのセリフです。登場人物はそれぞれが独自のワードセンスやユーモア、言い回しを持っています。それが他者とはっきりと区別できていれば、個性を確立できているといえるでしょう。
ためしに一度、シナリオを書いている段階で、発言者を隠してセリフを読み上げてみてください。誰のセリフなのかが判断できなければ、まだ個性を盛り込むことができるという合図です。
キャラクターが立つセリフを考えるとき、口癖や言い回しを工夫するのもアリです。しかし、それだけではなかなか深みが増しません。そこでぜひ試してほしいのが、セリフをひねること。たとえば、主人公の少年が「おなかがすいたなあ」といいたいとき、ただひとり言をつぶやくよりも、学校で飼っているメダカを見つめて「おいしそうだなあ」といわせたほうが、キャラクターの個性を表現できます。キャラクターというフィルターを通して、さまざまな言い回しを使ってみるのをおすすめします。
鉄則①:セリフを見ただけで誰が話しているのかがわかること
シナリオのセリフを、名前を隠して読んでみる
→瞬時に発言者がわかればOK。複数の人物に置き換えられる場合は、さらに工夫する必要がある。
POINT
ひねりのある言い回しを考える
「おなかすいたなあ……」
→人物の感情は伝わるものの、個性には欠ける。
「メダカっておいしいのかなあ」
→空腹感+キャラクターの思考の癖や性格が伝わる。
シルエットだけでキャラクターがわかるようにする
もうひとつの指標となるのが、キャラクターのシルエットです。眉毛や目つき、髪色などで容姿の描き分けを工夫しているつもりでも、意外と髪型や輪郭が似ているといった場合は多いもの。キャラクターがシルエットになったときでもすぐに見分けられるくらいまで極端に差別化を図りましょう。具体的には、髪の長さや身長、体型、手足の長さなどに着目して大胆に描いてみるのがポイントです。
鉄則②:シルエットだけで人物がはっきりと判断できること
NG
髪色や顔のパーツを描き分けても、シルエットに大きな差はない。
・髪色
・目つき
・眉毛の形
・メガネの有無 など
OK
身長や体格などを使って描き分けると、シルエットでも大きな差が出る。
・身長の高低
・体格(痩せている/太っている、丸い/ごつごつしている)
【出典】『テクニックでセンスを超える! プロが教えるマンガネーム』著:佐藤ヒロシ
【書籍情報】
『テクニックでセンスを超える!プロが教えるマンガネーム』
著:佐藤ヒロシ
マンガを描く上で、アイデアやイメージを形にするのは難しく、面白さを伝えるためにはネームが必要です。ネームは、コマ割りや構図、キャラクターの配置などを具体的に示す設計図であり、作品の完成度を高めるために何度も修正を繰り返します。本書では、ネームの作り方と素晴らしい作品になるためのポイントを解説し、実際のネーム添削も紹介。ネームを描くことが、面白いマンガを作成する第一歩です。マンガネームの書き方に悩んでいる方にぜひ読んでいただきたいおすすめの一冊です。
公開日:2024.06.27