「病は気から」は本当だった?
不安障害の治療のひとつに「自己暗示法」というものがあります。
ここでは実際に暗示を行う際のポイントと効用、注意点を見ていきましょう。
寝るときの言葉で自己暗示を試す
20世紀初頭、フランスの薬剤師エミール・クーエは、効果のない薬を飲んだ客が「病気が治った」と礼に来たことに驚きました。クーエは「薬を飲めば治る」という思い(想像力)が肉体と精神に影響を与えたのだと考え、薬剤師をやめて「自己暗示法(クーエ療法)」という診療をはじめ世界的に有名になりました。その方法は「日々、あらゆる点で、私はますますよくなっていく(Day by day, in every way, Iʼm gettingbetter and better.)」という言葉を毎日繰り返すというものです。
そもそも暗示は催眠状態、疲労状態のときにもっとも効果があるとされています。そこで「モノは試し」です。毎晩、眠りにつきそうなときに、あなたの目標、理想、願望を言葉にし、自分にいい聞かせてみましょう。
不安障害を持つ人の中には、無意識が大きく支配する幼少期に、親や周囲の大人から「できない」「無理」「ダメだ」といった否定的な言葉をかけ続けられた経験があるという人も多いようです。
それは、一種の暗示がかかった状態といえます。もしその暗示が、現在のあなたの自己評価の低さや自信のなさにも影響しているとしたら、今度は、自分自身を新たな暗示で変えられるかもしれません。
自分で自分に肯定的な刷り込みを行う
自己啓発、または心理学の分野に「アファメーション」というテクニックがあります。目標とすることや達成したいことなどを言葉にし、声に出したり、紙に書いたりする方法です。
アファメーションで使う言葉は、①現在形の言葉、②ポジティブな言葉、③短い言葉、④実現を前提とした言葉、などがよいとされています。これは、寝る前の自己暗示メッセージにも応用できるでしょう。
このアファメーションは、臨床心理学でも、かなり効果があるとされています。自分で自分にいい聞かせることを続け、あきらめずに不安や恐怖を手放していくことによって、それまで難しいと感じていたこともできるようになるはずです。
ただし、短期間で劇的な効果が出ると思わないほうがよいでしょう。なかなかうまくいかなかったとしても、短い時間でよいので毎日の習慣として続けていくことで効果が出ると考えましょう。
大切なのは、「思い込みは現実ではない」ということです。もし、幼少期の暗示があなたを縛っているのであれば、自分自身でよりよい刷り込みを行うことで、不要な思い込みによる縛りを捨てられるということを知っておきましょう。
「アファメーション」のつくり方
アファメーションとは、端的にいえば「ポジティブな言葉を自分自身に投げかけること」です。ひとり言、ノートに書き出す、人に宣言するなど、やり方は自由です。
❶「私は」からはじめる
○私は起業する
×彼は起業する
❷短い言葉にする
○私は社長になる
×私は2年後、課長になり部下を20人束ね…
❸現在形にする
○私はパイロットになる
×私はパイロットになりたかった
❹ポジティブな言葉にする
○私はすてきな店をつくり全国チェーン店にする
×私は辛苦の果てに全国チェーン店を展開する
❺ネガティブな言葉は使わない
○私はゆっくり療養して病気に勝つ
×私は病気の苦しみに耐えて克服する
❻実現することが前提と考える
○私は世界一周旅行をする
×いつか世界一周旅行をしたい
ポジティブな言葉を何度も反復することで、肯定的なイメージが脳に刷り込まれていきます
CHECK!
- 毎日、目標や理想、願望などをいい続けることで不要な思い込みを手放し、考え方を変えることができる
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修
【書誌情報】
『心の不調がみるみるよくなる本』
ゆうきゆう:監修
現代増加の一途をたどる「不安障害」。
不安障害とは払拭できないほどの不安や恐怖の感情が過剰に付きまとい、日常生活に支障をきたすような状態になることです。
一概に不安障害といってもさまざまな症状があり、突然理由もなく激しい不安に襲われて発作などを引き起こす「パニック障害」や、謎の強迫観念にとらわれて意味のない行為を繰り返す「強迫性障害」、若者に多く人前にでると異常に緊張して体調を崩す「社交不安障害」などタイプは異なります。
本書ではそのような不安から引き起こされる心の不調について、症状例をそえて専門医がわかりやすく解説。自分の「不安障害度」を簡単にチェックできる診断テストも掲載。病気を自覚し、その症状にあわせた治療を受けられるようサポートする一冊です。
公開日:2024.12.30