持久力とは何ですか?
選手から「持久力を上げたい。何を食べればいいですか」と、質問を受けることがあります。私から「持久力は、どういう力ですか?」と質問すると、選手は「え~っと」と、言葉を詰まらせることがあります。私は、持久力は「長い時間、体を動かし続ける力」と思います。長い時間、体を動かし続けるということは、「体を動かすエネルギー源(主に炭水化物)」「炭水化物の代謝に関わるビタミンB1」「酸素の運び役となる赤血球の材料(タンパク質、鉄)」が必要と考えます。
エネルギーとビタミンB1を補給する
野球は守備・攻撃の練習、ランニング・ウエイトトレーニングなど、練習時間が長い競技です。また、試合時間も他競技に比べると長いですね。私は、野球選手に持久力は、必要な体力と考えます。私は、指導者から「最近は食が細い選手が増えていると感じる」話をお聞きします。もし、選手の食事量が減ると、エネルギー補給量が減りますので、練習やトレーニングに必要なエネルギー量を確保できなくなります。持久力を上げるトレーニング内容は、主にランニングなど長い時間体を動かすトレーニングを行うことが多いと思います。体を動かすエネルギーが足りなくなると、練習・トレーニングの途中でバテて、中断してしまうかも知れません。結果、練習・トレーニングを最後までやり切ることができなくなり、持久力を上げることが難しくなります。練習・トレーニングの中盤から後半にかけて、集中力が落ちる、足が動かなくなる、ランニングのタイムが遅くなるなどが起こる時は、エネルギー補給量が足りないのではと考えます。
また、エネルギー源となる炭水化物を消化吸収し、体の中でエネルギーとして使うには、エネルギー代謝に関わるビタミンB1が必要です。ビタミンB1が不足すると、炭水化物を十分に補給できていても、エネルギーに変えられにくくなり、バテやすくなります。
ビタミンB1は、玄米、胚芽米、豚肉、レバー、大豆、枝豆などに含まれています。枝豆は、さやから取り出した「むき豆タイプ」が冷凍、水煮がスーパーで売られています。炒め物、和え物に加える、豆ごはんのグリンピースの代わりに枝豆を入れてはいかがでしょうか。
酸素の運び役は、赤血球
長い時間運動を続けるには、酸素が必要ですね。血液には、赤血球、白血球、血小板がありますね。それぞれの働きを覚えていますでしょうか。これら3つの中で酸素の運び役はどれでしょうか。酸素の運び役は赤血球ですね。赤血球は、タンパク質と鉄から作られています。食事量が少なく、鉄の摂取量が減り、体内の鉄の不足状態が続くと、「鉄欠乏性貧血」になり、息切れ、めまいなどが起こり、練習・トレーニングについて行けなくなるかも知れません。「鉄欠乏性貧血」は、血液検査しヘモグロビン濃度を調べます。ヘモグロビン濃度が低いと医師から「鉄欠乏性貧血」の診断を受け、治療が行われます。
昔は、「鉄欠乏性貧血」は、女性に多いと言われていたことがありました。(表1)は、国体選手の低ヘモグロビン濃度を調べたものです。表の通り、高校生以上では男女差がないことが分かっています。
(図1)は、18歳~35歳の女性113名を貧血でないグループ(正常)、貧血の症状はないが鉄が不足しているグループ(鉄不足)、鉄欠乏性貧血グループに注意力、記憶力、学習力に関するテストを行った時の結果です。鉄欠乏性貧血グループは、他のグループに比べて、すべてのスコアが低くなっていました。
鉄欠乏性貧血グループは、長い時間話を聞く、集中力を維持して学習することができなくなり、スコアが低くなったのではないかと考えられます。ただし、研究論文では、女性18~35歳を対象にした研究結果であり、鉄欠乏が認知に及ぼす影響は、発達中の脳に限定されるものではないと書かれています。この研究結果が、成長期であるジュニア世代に当てはまるとは言えません。しかし、鉄欠乏性貧血は、体力だけでなく、学力にも影響がありそうです。
鉄は、牛肉や青背魚、ほうれん草などの青菜類に含まれています。しかし、鉄は吸収されにくい栄養素です。ビタミンCをいっしょにとると、鉄の吸収を助けます。ビタミンCは、ブロッコリー、パプリカ、かぼちゃなどの緑黄色野菜、じゃがいも、さつまいも、オレンジ・みかん・レモンなどのかんきつ類、いちご、柿、キウイなどに含まれています。例えば、牛肉を使ったカレーライスや肉じゃが、ブロッコリーと卵のサラダ、ほうれん草とパプリカの和え物などは、鉄とビタミンCをいっしょにとることができますね。いろいろな料理に組み合わせやすい食材が多いですので、いろいろなアレンジを楽しんで食べることができると思います。