SPORTS COLUMN
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豊田清が語るメンタルトレーニングの効果

Text:遠藤玲奈

【元ライオンズ/ジャイアンツ/カープ 豊田清さんトークショー】

先日、テニスの全仏オープンを現地で観戦してきました。3日間でたくさんの試合を見てひしひしと感じたのが、メンタルの重要性でした。そして、多くの選手がプレッシャーに打ち勝つためのルーティンをもっていることにも気づきました。メンタルとルーティン。これらは競技を問わず、スポーツにおいて大きな役割を果たすのだということを、豊田清さんのお話から学びました。

読売ジャイアンツ、広島カープでもご活躍された豊田清さんのプロ野球選手としてのキャリアは、西武ライオンズからスタートします。特別体格に恵まれていたわけでも、体力に自信があったわけでもない豊田清さんは、期待のルーキーとはほど遠い存在だったそうです。2年間一軍での登板なく過ごした後のオフに、このままではいけないと覚悟を決めます。翌年のオールスター休みの間に打撃投手の役割をする機会があり、その際に好投を見せたことで、一軍で起用されるようになりました。

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豊田清さんがクローザーを任されるようになったのはその6年後、2001年からです。ピッチングコーチから配置転換の話があると聞いた時には、ローテーションにも入っていないのにと不思議だったそうです。チーム全体として見れば贅沢な話ですが、当時の西武の投手陣は十分に磐石で、力があっても起用されるとは限らないという状況でした。そのような中で抑えの打診があったのですが、当初は先発しか頭になく、断りました。しかしその後、当時監督だった東尾修さんに、その一球一球に対する思いの強さはクローザー向きだと言葉をかけられます。投手出身の東尾修さんからの期待に応えるべく、転向を受け入れました。

 同じ投手とはいえ、先発と抑えでは役割も、それを果たすための準備も全く異なります。先発は一度登板したら次の登板までは自分のペースで調整しながら過ごすことができます。抑えはそういうわけにはいきません。いつ出番がやってくるかわからないので、常に戦況を確認し、肩を作り、心身ともに準備を整えている必要があります。 準備したものの結局投げなかった、ということが続けば、登板間隔が長く空いてしまう場合もあります。てっきり投げなくてよいと思っていたから、あるいは、ずいぶん久しぶりだったから、打たれてしまった、という言い訳は決して許されません。それでも点を与えずに接戦を逃げ切るのが、クローザーの務めなのです。

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とはいえ、毎回完璧に役目を果たせるわけではありません。豊田清さんも抑え転向1年目の8月に三度のサヨナラ負けを喫してしまい、どのように8月を乗り越えるかが翌年以降の課題となります。ホームランを打たれると、それ以降打たれまいとして力んでしまう、すると余計に投球が乱れるという悪循環に陥るのを防ぐために、メンタルトレーニングを学びました。その時に始めたことのひとつが、ファンの皆様にはおなじみの、後ろを向いて胸に手を当てるポーズです。これをすれば落ち着くという、いわゆるルーティンです。

マウンドに上がる時にはきっとこのような状況になっているはず、だからこうしてアウトを取ろうというシミュレーションを前日に行なっています。それをルーティンの間に頭の中で再確認します。そして打者に向き直った時には、いける、という気持ちになっているそうです。

特別な心がけをしなくても平常心を保てる人も、中にはいるのかもしれません。が、多くの人はそれほど強くないのではないでしょうか。  大事な場面ほど緊張してしまう人は、ひとまず胸に手を当てて深呼吸をしてみましょう。難局を乗り越え勝利をつかみとるクローザーの気分で、目の前の課題に取り組めば、きっとうまくいくはずです。

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『ラブすぽ』ライター:遠藤玲奈
池田高校のやまびこ打線全盛期に徳島に生まれる。慶應義塾大学法学部卒業、東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。選手としての経験はないが、独自の方法で野球の奥深さを追究する。特に気になるポジションは捕手。フルマラソンの自己ベストは3時間31分。