がつプロ変化球大事典〜カットボール編〜
変化の仕方から握り、歴史、使い手で全て教えます!
知っているようで知らない、奥深き変化球の世界を「がっつり!」掘り下げる。2000年代に一世を風靡し、現在も使い手の多いカットボールだ!
『カットボール』の歴史と現在地
『一時は多くの投手が採用するも近年は減少傾向に?』
カットボールという名称が普及したのは前述のとおり1990年代後半以降だが、実は同じようなボールを投げる投手はかなり多く存在していた。ただ、当時はまだ「変化球」として認識されておらず、メジャーではムービング・ファストボール、日本で
はクセ球、真っスラの呼称で浸透していた。使い手と呼ばれる投手も、意識してボールを変化させていたというワケではなく、むしろ「普通に投げているつもりなのにボールが勝手に変化する」という程度の認識が強く、特にきれいな直球=フォーシームが良しとされていた日本球界ではクセ球を矯正されることもしばしばあった。とはいえ、これを「持ち味」としてプロで活躍した投手もおり、例えば全盛期の斎藤雅樹などは直球がベース手前で小さくスライドする「真っスラ」を武器としていた。また、元南海の皆川睦雄は1968年に小さく曲がるスライダーを武器とし、当時の監督である野村克也は皆川睦雄を「日本で初めてカットボールを投げた投手」と称している。
2000年代にメジャーでカットボールが浸透し始めると、外国人投手を介して日本にもそれが普及。日本球界に広めた最初の人物は武田一浩だといわれている。それまではスライダー、カーブ、フォークといった変化量の大きい球種が隆盛を極めていただけに、カットボールのような「速く、小さく変化する」変化球の効果は絶大で、日本球界にも一時、ブームを起こした。松坂大輔や川上憲伸ら、当時日本球界を代表するエースもカットボールを持ち球としており、その投げやすさもあって収得する投手も後を絶たなかった。しかし、近年はカットボール、ツーシームといった変化量の少ない球種に対して打者も順応し始め、一時期ほどの効果は見込めなくなっているのも事実。フォークやカーブのような変化量の大きな「オールドスタイル」の球種が盛り返してきており、「決め球」とする投手は減少傾向にある。
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公開日:2020.05.14