SPORTS COLUMN
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江尻慎太郎、攝津正。引退しても共に歩く道。

Text:遠藤玲奈

『ラブすぽ』トークショーレポート

 野球を見るのは大好きですが、プレー経験がないので実感としてわからないこともたくさんあります。特に想像も及ばないことのひとつが、投手の身体への負担です。先発投手は、練習は日々しているとしても、本番はほぼ週に1回。中継ぎ投手も、イニングが少なくても何日も続くのは厳しいと聞きます。一方、野手はレギュラーであれば毎日試合に出るのが基本です。
 何がそれほどまでに異なるのでしょうか。長年ピッチャーとしてご活躍された江尻慎太郎さん、攝津正さんのお二人のお話から、登板の大変さがリアリティーを伴って伝わってきました。

↓江尻慎太郎さん&攝津正さんトークショーの模様はこちらから! ↓
普段見ることのできない江尻慎太郎さん&攝津さんの笑顔の写真を見る

 多くのホークスファンが「攝津立ち」をご存じかと思います。人気の女優さんやタレントさんが始球式で投げるのを、後方からただ立ち尽くして見ている攝津正さんの様子を表す言葉です。トークショーでは江尻慎太郎さんのアイドル役熱演とともに、攝津立ちを実演いただきました。
 これからプレイボールという時にはしゃいでいたらお客さんにどう思われるか、という慎みもあったそうですが、それだけではなく、実はピッチャーの性による行動でした。試合前に調整し、ロジンバッグを触った手は、投げる状態として完璧に整えられています。それを変えたくないのだそうです。
 何かに触れるのも、投げるまでに長く時間が経ってしまうのも、できれば避けたい。それほどまでに繊細な努力の積み重ねによって、優れた投球がなされるのです。

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 江尻慎太郎さんのサイドスローへの適性を見抜き、サイド転向を強く勧めたのは、当時日本ハムファイターズのコーチだった小林繁さんでした。転向に成功した江尻慎太郎さんはまた、肩を素早く作る能力もおもちでした。それこそが、中継ぎとして活躍するための条件です。ブルペンで座った捕手に3球だけ投げてマウンドに向かった時もあったそうです。

 お二人に共通していたのが、肩や肘だけではなく、足を痛めてしまうというエピソードでした。それだけの力で踏み込んでいるということです。地面に接する足の痛みは肩や肘以上にごまかしようがなく、痛み止めの注射には即効性はありますが持続性はありません。
 身体のあちこちにかかる負担はあまりにも大きく、それでも立ち続けたい。マウンドとはそういう場所なのです。話しぶりは優しいお二人でしたが、燃えるピッチャー魂を垣間見ることができました。

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 現役時代、2年間チームメイトだったお二人は、今も仕事を共にする仲間です。江尻慎太郎さんはプロアスリート出身タレントのマネジメントが主要業務のホークスの子会社の社員、その会社の契約タレントのひとりが攝津正さんです。
 引退して新たな道を歩み始めたら、現役の時と同じように過ごしていくことはできない。「それまでやったことのない分野に取り組むのなら、より練習しなければならないのは当たり前」という江尻慎太郎さんの言葉が印象に残りました。攝津正さんはそのことをよく理解して熱心に励んでくれると、マネージャーの立場から賛辞を送っていました。
 攝津正さんも、今は人前で話すことが楽しい、自分が納得するまでやりたいと、明るい表情でおっしゃっていました。ビジネスライクではなく、ただの友達でもなく、場所が変わっても互いに信頼しあっているお二人は、大人同士の理想的な間柄のように見えて羨ましくなりました。

 ご活躍の場を広げつつ、お二人とも、今後も何らかの形で野球に関わり続けていくことは間違いありません。決して楽ではなく、苦しいことも多い、それでも楽しくておもしろい野球の奥深さを、たくさんのファンや、これから野球ファンになりえる人たちに伝えてくださることを期待しています。

『ラブすぽ』ライター:遠藤玲奈
池田高校のやまびこ打線全盛期に徳島に生まれる。慶應義塾大学法学部卒業、東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。選手としての経験はないが、独自の方法で野球の奥深さを追究する。特に気になるポジションは捕手。フルマラソンの自己ベストは3時間31分。