SPORTS COLUMN
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【西岡剛単独インタビュー】最後までやりきった者だけが辿り着ける場所とは?

Text:高村麻代

栃木ゴールデンブレーブスにマジックが点灯

4月に開幕したプロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグは、NPBより一足早く9月上旬にリーグ最終戦を迎えるため、いよいよ終盤。
9月1日現在、各球団とも残る試合は数試合。1~3位の順位は僅差で、後期の首位争いを展開しています。

栃木ゴールデンブレーブスはリーグ公式戦以外にも積極的にNPBとの交流戦を組み、8月は千葉ロッテマリーンズ・ファームに2連勝。この2戦で、怪我で出遅れた期待の長距離砲・新山進也選手が2試合連続ホームランを放つなど、選手の実践感覚を養うとともに、NPBへのアピールの場となりました。
そして8月25日、東地区3位の新潟との一戦。8月12日の登板で球団初の10勝目を挙げた若松駿太投手が9回1失点の好投。打っては、初回の西岡剛選手の2ランHRを含む6得点でブレーブスが快勝!球団創設3年目にして初の「M6」が点灯しました(9月1日時点でマジック2に)。
寺内崇幸監督の采配により、ベテラン・若手ともに日替わりのヒーローが登場し、最終戦に向けて良い流れが来ています。

一方、選手たちは試合前の球場外のトークイベントに参加したり、地元で開催される講演会に出席したりするなど、プレー以外でファンを惹きつけることも欠かせません。その中で、常に多くのファンに囲まれ、各界の著名人からも慕われる西岡剛選手の「愛され力」に注目。
国内外、カテゴリーも地域性も全く違う4つの球団でプロとして野球を続けてきた西岡選手には、チームワークからプライベートなお付き合いまで、人間関係にもプロとして信念が見えました。

―野球におけるチームワークについて
NPBの場合、チームワークというのはあるにはあるけど、個の強い力が大事ですね。個々の力が大きいチームが勝つ。特に1軍は勝つことだけを意識してプレーをする集団なので、そこでは一般に言われているようなチームワークというのは無いんじゃないかな。
例えば富士山に登るとき、12時に頂上にあがってきてくれと言われたとします。頑張って汗水たらして12時までに自分の足で登るのもOK 、中にはお金を使って下から頂上までヘリコプターで上がる人もいるかもしれない。どっちでもいいんですよ。12時までにきっちり頂上に来ることがプロのメンバー。
登る過程じゃなくて、12時に来るという結果をきっちり果たすのがNPBの1軍です。登る途中でケガする人もいれば、一生懸命来ても5分遅れることもある。仕方ないですけど、そういう人は2軍に落とされるという世界です。

NPBとBCリーグの違いとは

―BCリーグの場合は…?
BCは、NPBに入ることを目標にしているので、勝つことも必要だけど、勝つことよりも一人一人のレベルアップが大事。NPBの2軍、3軍の考え方と一緒なので、この場所は過程も大事にするということだと思います。チームワークということを考えると、NPB(1軍)は、自覚があって意識が高いので、試合が始まれば自然とそういう風になる。
チームワークでどうこうしようと考えることではないかな。チームワークというのは一人一人の意識が強ければ出てくるもの。友達感覚で仲良くなるのがチームワークではない。それは学生の間だけだと思います。我々は野球でお金を稼いでいるわけで、お金をもらわずにやる学生とかアマチュアとは違いますよね。
社会人になって野球で生活するようになったら、仲間意識というのは必要じゃない。今日勝ちたいという強い想いの人たちが集まるところです。ここ(ブレーブス)を見ていると、学生時代からの仲良し集団のままの意識の選手もいると思うので。そういう意味では、まだまだ甘いんじゃないですかね。

―BCリーグにやってきて、ファンとの距離感は?
特に変わりません。ファンとの距離が近いと言われるのは、数の関係だと思います。NPBのように毎日4万人が入る球場であれば、その近さにはなれないですけど、ここはだいたい1000人くらいなので近さが保てるということ。
(ファンへの対応も)一緒です。人数が違うと出来ることも変わってきますよね。ファンから声をかけられて嫌な思いをしたことは無いです。その時のファンの数の多さやその日の事情によっては、全て対応できないこともあるので、そういう場合はきっちり「今日は本当にごめんなさい」と。そういう一言でファンの人は考えてくれます。
それを素通りしたり、無視したりすると残念がるのは当然でしょうからね。

―地元(拠点の小山市)密着という印象もあるが?
いつもの場所にいって、いつもの人に会えば、挨拶するのが当たり前であって、それが繋がっていったということだと思います。行った先の人が少し構えることはあっても、自分は無いです。
周りの(NPBの)選手もご飯を食べにいって声をかけられていますけど、中には嫌な人もいるんですよね。けど嫌だったら外出しなければいいと思うんです。悪いことをしているわけでもないし、堂々としていい仕事をしていると思うので、声を掛けられたくないのであれば外にでなければいい、という風に僕は考えます。
ファンとか関係なく、人と人が街で会っても、人間関係は全て同じだと思います。親しくなっていく過程で何も意識したことはない。そんなことを計算して付き合う人は友達ではないですよね。

発言し続けることの意味とは

―メディアとの関係については?
こうやって取材を受けて、会話をするのはNPBだと毎日。それが記事になるかどうかは別として、何十人という記者の方と日ごろから話をしていましたからね。記事に書かれると思わずに発言したことが書かれたこともあったので、記者の方と距離を縮められないこともあったし、担当が何人かいるので、この人には本音を話せる、と思ったこともありました。
あちらも仕事で、僕らが何も発言しなければ、その人の仕事を無くすことになるので、NPBの世界は、一選手がいろんな人の仕事、つまりは生活の責任を持つようなものですよね。
そう考えると、発言をすべきだと思うんです。ただ僕らも人間ですから、結果が出ればテンションがあがるし、チャンスで打てなければ気分も落ちます。
それでも僕は発言をしてきました。なぜかと言うと、新聞やスポーツ紙というのはすごく良いところを取り上げてプロ野球を華やかな世界に見せるけど、それだけでは当たり前の光景に見える。
サラリーマンなど一般企業で働いて苦労している方も沢山いてると思うんですけど、僕らも大変な部分がたくさんある。打てない、ミスしたっていう時の苦しい感情、気分の悪さを発言するのもプロだと思います。華やかな世界をそのまま表に出すのではなく、プロ野球選手もそういう気分になるということを知ってもらっていいと思います。

―ご自身について発言することは苦ではない?
発言することによって、活字で世間に出される場合、テレビとか映像だと言葉が悪くても表情とかで色んな捉え方をしてもらえるけど、文字だけだとテンションまでは伝わらなくて、僕を理解できないという人もいるけど、それでいい。
ずっと言い続けていれば、どこかで僕の言葉を(直接)聞いた時に、こんな感情でしゃべってはったんや~と一気に見る目が変わることもあるんですよね。そのためにも継続が大事です。
もう10数年、自分のトークショーをやっていて、いろんな方のトークショーも観ます。オブラートに包んだような言葉とか本で読んだことを伝える人もますが、僕はなんでも自分で経験したほうがいいというタイプなので、話すことは自分の経験したこと。だから言葉に詰まることもないし、きれいに言おうとも思わない。
それが良い悪いは別として経験はめちゃくちゃ豊富な方ですから。特に20代は誰よりも遊びました。遊ぶことによって失敗も多くしたし、離婚もしました。それを何年後かに話せるというのは、当時よりも確実に自分の状態が上がっているから。世間では引いてしまうようなことでもストレートに話せるんです。
色んな人とも会いました。大企業の会長とか、詐欺師のような人も。過去に経験が無い人は、誰でも良い人そうだと信じてしまいますけど、今は会ってすぐ、怪しいなと一瞬で分かる。
当時はマイナスな要素でも、いま35歳にして豊富な経験があるということは財産。僕が全て正しいわけじゃないけど、その判断が早くできることで、人とのコミュニケーションが変わってくると思います。すべては経験です。

優勝する、ということ

―改めて、ご自身の調子、チームのこと。
最近はちょっと落ちています。7月31日(NPBへ今季復帰の期限)を過ぎて、来季に向けてトレーニングを始めたり、個人的な練習も取り入れたりしているので、違う疲れが出てきていて成績に直結しています。そういう意味では僕自身は不甲斐ないと感じていますが、次を目指すために頑張っているところです。
チームとしては優勝させたいと思っていますが、僕の経験上そんなに甘くない。後期始まって間もなくのホームゲームで、群馬(前期優勝)に4点差を引き分けに持って行かれた試合。あれを勝ち切っていかないと優勝は無いし、後々ああいう試合が響いてきます。
とはいえ、やるべきことをやるだけ。はっきり言って、この戦力で優勝争いしているのは、僕からするとすごいこと。群馬、新潟と比べるとチーム力的には個々の力は低いと思うけど、寺内さんが監督で、飯原さんが選手兼コーチ、そして岡田(外野守備走塁コーチ)がいる。
その監督、コーチがとても野球をやりやすい環境を作ってくれています。ほかのチームよりのびのびできている、うまくチームが回っていると思います。
今後僕らはどのチームとやっても勝つことだけしか許されない。群馬やどこかが勝った負けたなんて気にしている場合じゃない。勝っていけば、おのずとそこ(優勝)に近づきます。最後まで気持ちを切らさずやりきった人間に、その先があるんです。