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ブルペン入りへ順調な回復を見せる奥川恭伸。その”笑顔”の理由とは!?

Text:大利実

1月に右ひじの炎症が分かり、ノースロー調整となった奥川恭伸。キャンプも2軍スタートとなったが、回復は順調で、ブルペン入りも近いとされる。
奥川は甲子園での試合中も練習中もその笑顔が印象的だが、その“笑顔”には理由があった。

奥川恭伸「セ界から世界へ」①(別タブで開きます)

■奥川恭伸「セ界から世界へ」②ピッチャー・奥川誕生

幼少期のエピソードとして、ピッチャー・
奥川につながる話がある。小学生のときに指
導していた宇ノ気ブルーサンダーの広瀬勝巳
さん(現・代表)が教えてくれた。
「奥川には7つ上のお兄ちゃんがいるんですけ
ど、3歳のときから練習についてきていまし
た。『やっちゃん、やっちゃん』とかわいがっ
ていて、『やっちゃんは、いつ入るの?』とず
っと聞いていたんです。」
「お兄ちゃんが試合を
している間、奥川は野球場の横にある壁を使
って、朝から夕方まで壁当てをしていました。
試合で投げているピッチャーよりも、球数を
放っていたんじゃないですか」
奥川本人に確認すると、ニコッと笑いなが
ら、当時を懐かしむように話し始めた。
「壁当てはずっとやっていましたね。それで、
ブルーサンダーに入る前にヒジを痛めてしま
って、しばらく安静に。先発したピッチャー
より投げていたと思います」
チームに入団する前に、ヒジを痛めた。こ
んな話はなかなか聞いたことがない。知られ
ざる奥川伝説。それだけ、ボールを投げるの
が大好きな少年だった。

また、母・真由美さんが学生時代にバドミ
ントンをやっていたこともあり、小さい頃は
野球と並行して、ラケットとシャトルで遊ん
でいたそう。広瀬さんによると、小学生のと
きから手首の使い方が柔らかく、バランスの
いいフォームをしていたという。

「笑顔」の秘密

宇ノ気中が優勝した全中を取材した際、マ
ウンド上で笑みを見せながら、楽しそうに投
げていた印象が残っている。甲子園のマウン
ドでも、笑顔で仲間に声をかける奥川がいた。
でも、はじめからそうだったわけではない。
マウンド上で味方のエラーに怒ったり、球審
の判定に不満を見せたりする時期もあった。

中学1年生のときに監督を務めた蔵本章夫
先生が証言する。蔵本先生は、奥川の父・隆
さんの野球部時代の恩師でもあり、親子二代
にわたり奥川家とのつき合いがある。
「奥川は真面目で賢い。両親の教育がしっか
りしていますから。でも、マウンドでは表情
に出てしまうところがありました。特に球審
の判定に対して、すぐに表情が変わる。マウ
ンドで『え?』という顔を見せる。」
「それで、
すぐにマウンドから下ろしたこともありま
す。奥川に言ったのは、『絶対に表情に出すな。
イヤな表情をするな』。それは何度も言いま
した」
当時はまだ精神的に幼いところがあった。
奥川も、そのあたりについては自覚がある。
「あのときは本当にひどかったというか……。
今でも覚えているのが、2年生に上がる前の
練習試合で、蔵本先生と両親にこっぴどく怒
られたこと。調子が悪くて、なおかつ打たれ
て、審判の判定にも不満で、声をかけてくれ
るベンチからの声も耳に入っていなくて……。
家に帰ってから、『人生で一番』と言ってい
いぐらい、怒られました」
とはいえ、まだ素直に受け止められず、「周
りに怒られるから、表情に出さない」と思う
程度だったという。

新たな気持ちが生まれ始めたのは、中学2
年生のときに野球未経験の福島栄一先生が監
督に就いたことだった。
「野球の経験がないけれど、ぼくたちのため
に一生懸命、ノックを打ってくれました。サ
イドネットに向かって、先生がひとりでノッ
クの練習をしていることもあって、『今まで
当たり前だったことが、当たり前じゃなかっ
たんだな』と初めて思ったんです。福島先生
の姿を見て、人間的に成長できたと思います」
こうした経験をしてきただけに、今の奥川
は、仲間がエラーしても気持ちが切れること
はない。と思ったが……、本人に直撃すると、
じつはそうではないらしい。

「ぼくも人間ですし、高校生なので、たまに
態度や表情に出てしまうことがあります。仲
間に『大丈夫!』という意味で、笑顔で声を
かけようとするんですけど、引きつった顔に
なっているときもあります。そういう面での
コントロールはまだまだ足りないですね」
メンタル面のコントロールは、プロでの課
題と自覚している

次回、奥川恭伸「セ界から世界へ」③「負けず嫌い」へ続く
(初出:【野球太郎No.033 2019ドラフト総決算&2020大展望号 (2019年11月27日発売)】)

取材・文:大利実(おおとし・みのる)
1977年生まれ、神奈川県出身。中学野球ライターの草分け的存在。『メルマガでしか読めない中学野球』を月3回配信している。出身地・神奈川の高校野球もライフワーク。『高校野球継投論』(竹書房)が好評発売中。

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