SPORTS COLUMN
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チームを勝たせるエースに。日ハム2位・立野和明の「沈まないカットボール」とは?

Text:高森勇旗

ドラフト候補の投球を捕球してその体感をつづる「ブルペンキャッチャー・高森勇旗」。今回は日本 ハムからドラフト2位指名を受けた本格派右腕・立野和明(東海理化)をキャッチング。
高森が「投手らしい投手」と惚れ込んだ実力と将来性を余すところなくお伝えする。
第4回はキャッチングを終えてのインタビュー

中日1位:石川昂弥①(別タブで開きます)

日ハム2位:立野和明④「真ん中で目立ちたくなかった」

──今日はありがとう。調子はどうだった?
立野 しばらく投げてなかったので、調子はそこまでよくはなかったですね。7〜8割くらいです。

──ドラフトもあって忙しかったもんね。ドラフトは緊張した?
立野 緊張しました。だからこそ、緊張の後にその反動で変なことにならないように、一層気を引き締 めようと思います。

──ちゃんとしてるね(笑)。プロの実感は湧いてきた?
立野 いや、全然です。自分の名前がドラフト会議の画面に映ることなんて、小さい頃には想像もつ かなかったので。

──体はまだ発育段階だと思うけど、今と3年前の高校時代で、どんな違いを感じている?
立野 高校時代は、とにかく柔らかく体を使うことを意識していました。今は筋力もついたので、力 を使えるという感じです。

──柔らかく投げるイメージは、誰かに教えてもらったの?
立野 高校1〜2年時にすごくケガが多くて、ケガをしない投げ方をずっと自分で考えて今のフォー ムにたどり着きました。

──具体的にはどんなケガ?
立野 足です。僕は走るのがすごく好きなんですが、足首など関節が硬いので骨にすごく負担がかか るんだと思います。体を柔らかくして、力ではない動きを身につけようとしてきました。

──すごくいいタイミングで気がつけたね。ピッチャーはいつからやってるの?
立野 高校2年の秋から本格的にやりました。本当はやりたくなかったんですけど(笑)。
──えっ、そうなんだ!
立野 僕、目立つのが嫌いなんです。あの真ん中(マウンド)で投げるのが想像できなくて。

──それは、相当珍しいね。
立野 あれだけ人に見られる場所なので、変なフォームで投げられないじゃないですか。だから、特 徴のあるフォームで投げたり打ったりする人って、本当にメンタルが強いなって思います。
──(爆笑)
立野 なので、普通のフォームで普通の球を投げようって。

──面白い考え方だね。高校時代は、ストレートの球速はどれくらいだったの?
立野 3年生の春で142キロくらいです。もともとヒジが下がって腕が抜けていたので、冬の間に 腕を縦に振るようにしました。
──すごくきれいに上から出るよね。やっぱり相当意識したの?
立野 肩を平行にして投げるって、小さい頃に教わるじゃないですか。左肩を下げたら、右肩が上 がる。それも、平行です。なので肩は平行なんだけど腕は上がる、というイメージです。

──高校から社会人に上がって、レベルはどうだった?
立野 いやぁ、すごかったです。ここまでの人生で一番キツかったです。精神的にも技術的にも。
──具体的には?
立野 もう、やることがいっぱいありすぎて……。体力強化はもちろん、技術的にはフィールディン グ、ベースカバー、ゴロ捕球。投げることは二の次でした。

──投げる前にやることがたくさんあったんだね。
立野 練習では投げること以外、試合では投げることに集中。そんな感じでした。
──投げることに集中して練習できたのは、どれくらいから?
立野 2年目からです。ようやくバッターのことだったり、データのことだったり、球種のことに気 が回り始めました。

カットボールを増やした理由

──球種は、この頃から一緒?
立野 いや、カットボールを投げるようにしました。僕は決め球がなかったので、カットボールを覚 えることによって、スプリットも生きるかなと思いまして。
──あれはすごいよね。久しぶりに本物のカットボールを受けた感じ。どうやって投げるの?
立野 まず変化球はストレートよりも腕を振ることを意識します。カットボールに関しては、今年の 夏に社会人日本代表の候補合宿で、トラックマンでボールのデータを測ったんです。その時「カッ トボールの回転数を上げたら、伸びのある沈まないカットボールを投げられるよ」って専門家からア ドバイスをもらいました。
──そう、沈まなかった! データから導いたんだね。
立野 僕も最初はボールを抜く感じで、沈むカットボールを投げていたんですけど、それからはボー ルを押す感じに変えました。
──押す? そんな感覚なんだ。
立野 まだ磨いている途中ですけど、最近はコツをつかんできました。抜けたり、曲がらなかったり することもあったんですが、ボールの握り方も変えました。

──すごい話だね。スプリットもよかったけど、あれはどう?
立野 日によってバラバラなんです。今日はすごくよくて、リリースポイントも完璧でした。
──リリースポイントは、やっぱり気にするの?
立野 投げている途中にわかります。いいフォームで投げると、いいリリースになるという感じで。 そのリリースポイントで投げるために、どうやって体を動かしていこうかと逆算しています。

──ベテランと話しているかのようだよ。ストレートもすごい伸びだった。あれはどんな意識?
立野 地面に叩きつけるイメージです。でも、地面を向くと体が前に倒れちゃう。だから、体を起こすための壁みたいなものをイメージしながら、腕だけを走らせる。それで、最後に3本の指で切る、 というイメージです。

──3本? もしかして親指も?
立野 はい。むしろ、親指が主体です。最初に親指に縫い目がかかって、その後に人差し指と中指に かかるイメージです。
──それは初めて聞いた! 親指にかけるの?
立野 はい、かけます。この感覚がないと、全然ボールがいきません。なので、手の中でボールが動 いているイメージです。僕は力んでリリースをしないので、爪が割れたこともないです。大事なのは フォーム全体の流れです。

──素晴らしい感覚だね。今後、プロで活躍するにあたって、どんな目標があるの?
立野 チームを勝たせられるピッチャーになることです。主力として投げたいです。大きなことは言 いたくないですが、エースと呼ばれる選手になりたいです。
──そのために、どんな課題があるの?
立野 やっぱり、体づくりですね。社会人野球から行くので、即戦力として期待されるかもしれません が、焦ってケガをしてしまうのが最悪。僕はまだ若いので、まずは体づくりをしっかりやっていこう と思っています。プロの世界、厳しいのは当たり前だと思っています。そこを乗り切るだけではダメ で、一つひとつで何を学ぶか、だと思っています。

──スケールの大きい選手になっていってね!
立野 ありがとうございます!

次回、新コラム「プロスカウトは逸材のどこを見ているのか?」へ続く
(初出:【野球太郎No.033 2019ドラフト総決算&2020大展望号 (2019年11月27日発売)】)

(捕球・文=高森勇旗)
1988年生まれ、富山県高岡市出身。
岐阜・中京高~横浜(DeNA)。高校時代は強打の捕手として注目され、2006年高校生ドラフト4巡目で横浜に入団。2009年にはファームで打率.309、15本塁打を記録するなど期待されたが、2012年に戦力外通告を受け退団。『野球太郎』No.006よりスポーツライターとしても活動を開始した。

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