ダイヤモンド・オフェンスのスタートはサイド
ボールを相手コートのゾーン3まで運び、サイドレーンの高い位置に配置された選手がフリーな状況(スペースと時間を手にした良い条件)でボールを受けた時がダイヤモンド・オフェンスのスタートである。そのプレーには優先順位がある。ゾーン3でのプレーの優先順位は、ゾーン1、2での「5つのプレーオプション(4つのプレーオプションと個人プレーの優先順位)」とは異なる。
ゾーン3では、相手ゴールを目指すことが明確な目標となるのでサイドレーンの高い位置に配置されたボール保持者は、相手ゴール方向への斜めのパスが第一優先となる。ゾーン1、2では得点が最も可能なゾーン3まで前進することが目標なので縦パスが最優先となる。
ゾーン3からセットオフェンスを開始する。セットオフェンスを始める合図となるのがエントリーパスである。これはスペースと時間を獲得したフリーな選手へのパスのことであり、ゾーン3から行うダイヤモンド・オフェンスの場合は、サイドレーンで高い位置でボールを受ける選手となる(主にWGやSB)。
セットオフェンスをスタートするには、ゾーン3のサイドレーンに配置された選手がフリーな状況でパスを受けることが必要であり、もし相手のマークが厳しい場合は逆サイドに展開し、逆のサイドレーンからセットオフェンスを開始する。
守備戦術が急速に発展している現代サッカーにおいて、ゾーンディフェンスやマンツーマンディフェンスの他にミックスディフェンスやコンビネーションディフェンスなどもあるので、サイドレーンにフリーマンを生み出すことが難しい場合もあるが、そのような場合でも、どこかに必ずオープンスペースができる。オープンスペースに選手を配置して、そこからセットオフェンスを開始するプレーの柔軟性が必須である。
『著名人の言葉』
シャビ・アロンソ(元スペイン代表サッカー選手)
「ペナルティエリアにより速く着くことは、良いプレーを意味しません。より良いプレーとは、より良い条件で着くことです。」
●セットオフェンス
各選手があらかじめチームで決められた動きや位置に関する約束事に従って展開するオフ ェンスのこと。遅行。
●ミックスディフェンス
自身が守るゾーンにいる相手をプレーが切れるまでマンツーマンディフェンスをする。ただし、自身が所属するDFラインの他の選手のゾーンにボールが入ったら、カバーリングをしなければならない。
●コンビネーションディフェンス
例えば、DFラインのCBはゾーンディフェンスで、SBがミックスディフェンスやマンツーマンディフェンスをするなど。ポジションごとにディフェンス方法が異なる守備方法である。
【ミックスディフェンスへの対応例1】
サイドレーンのWGが相手SBにミックスディフェンスされた場合は、 WGが中へ移動し、同サイドのSBが高い位置を取りフリーマンになることもできる。
【ミックスディフェンスへの対応例2】
相手SBが、WGをミックスディフェンスすると相手CBとSBの間にスペースができる。そのオープンスペースにOMFが移動してパスを受け、そこからセットオフェンスを開始することもできる。
相手の守備方法を見極めることが重要だ。相手の守備方法が分かると、それに対応する配置や動きを入れることで、フリーマンを生み出すことができる。ここでいくつか、WGや高い位置にポジションを取るSBがエントリーパスを受けるためのマークを外す動きを紹介する。サイドレーンにフリーマンを生み出すと言っても相手の守備配置や守備の方法によってフリーになることが難しい場合もある。そのようなときに一瞬の動きでマークを外すチェックの動きが有効である。
「Iの動き」「Vの動き」「Xステップ」「ボックスステップ」の4つを紹介する。全てマークを外すための動きである「チェックの動き」は、動き出すタイミングとスピードの変化とスペース作りが重要だ。パスコースを確保した受け手はボールを受ける前に「チェックの動き」を開始する。一度、ボールを受けたいスペースと逆の方向に動いて相手を引きつけ、その後、自身で作り出したスペースでボールを受ける。「チェックの動き」をするタイミングは、パスコースを確保している選手がボールを受けてアイコンタクトをした瞬間である。
【ミックスディフェンスへの対応例3】
OMFが相手のCBとSBの間に移動すると、相手SBはWGへのマークからOMFへのマークにシフトするようになる。なぜなら、守備の優先順位として、より危険な位置にポジションを取る選手をマークするのが守備の原則だからだ。このようにしてサイドレーンの選手をフリーにする。
「ボックスステップ」はエントリーパスを受けるためのマークを外す動きではないが、中央でプレーをする選手がマークを外す場合に有効なので、加えている。「ボックスステップ」は中央にポジションを取る選手が「Xステップ」をすると、隣のディフェンスがマークをしてしまうので、一度バックステップし、その後少し膨らむようにサイドステップかクロスステップで素早く横に移動して、相手の視野外に移動し、前方に空いたスペースでボールを受ける。ウェーブの動きに近い。
このようにエントリーパスは、攻撃の選手が、相手の動き、守備の方法を観察し、相手のプレーを読み、予測して、素早くプレーを実行することが大切である。
【エントリーパスを受ける動き】
「Iの動き」「Vの動き」は、ボールを受けたいスペースと逆の方向に動いて相手を引きつけ、その後、自身で作り出したスペースでボールを受ける方法である。「Xステップ」は、主にサイドの選手が行う動きである。相手の視野外にポジションを取るために、パスと反対方向斜め後ろにバックステップをする。次に前方に空いたスペースでボールを受ける。
出典:『ダイヤモンドオフェンス サッカーの新常識 ポジショナルプレー実践法』著/坂本圭
『ダイヤモンドオフェンス サッカーの新常識 ポジショナルプレー実践法』
著者:坂本圭
日本ではまだ珍しいサッカー攻撃の概念・ポジショナルプレーを取り入れた戦術書!!スペインのプロチームでコーチライセンスを獲得した著者が、サッカーを勉強したい学生や指導者、日本式ではなく世界のトップシーンで導入されている新しいサッカーの攻撃方法を実践したいと思っている方々のために、ポジショナルプレーを実践するための方法としてダイヤモンドオフェンスを伝授します。
公開日:2021.11.07