SPORTS LAB
- スポーツを通じて美しくそして健康に -

「ハーフスペース」でボールを受けるとなぜ視野の優位性を獲得できるのか!?【ダイヤモンドオフェンス】

Text:坂本圭

ハーフスペースからサイドレーンにパスをする理由

ゾーン3からのダイヤモンド・オフェンスは「ハーフスペース」にポジションを取るボール保持者から、サイドレーンに配置され選手にボールをパスすることでスタートする。その理由は「ハーフスペース」にポジションを取るボール保持者がボールを受ける際に視野の優位性を獲得することができること、もうつはパスのオプションが多いからである。

「ハーフスペース」でボールを受けるとなぜ視野の優位性を獲得できるのか。ボール保持者の視野の優位性を説明する前に、視野と周辺視野について説明する。

【中心視野と周辺視野】
●視覚には中心視野と周辺視野がある。
●中心視野は、1秒に2つの状況から高品質画像の情報を取得できるが、焦点を合わせるのに時間がかかり、少ない解決策しか提供できない。見える範囲はおよそ5~10度。
●周辺視野は、1秒に4、5つの状況から低品質画像の情報を取得できるが、情報取得にかかる時間が速く、多くの解決策を提供できる。見える範囲はおよそ180度。

選手が周囲の状況を知覚するのは、ほとんど視覚からである。サッカーのように状況がめまぐるしく変化する集団スポーツでは高品質画像の中心視野ではなく周辺視野で十分である。

【ハーフスペースにポジションを取るとなぜ優位性を獲得できるのか】
ハーフスペースにポジシ ョンを取ることの優位性は、周辺視野とパスコースオプションの豊富さで優位性を獲得できるからだ。周辺視野の優位性は、ハーフスペースにポジションを取る選手が半身になり、センターレーンの選手からボールを受けると、相手とゴールとボール保持者の両方を視野に入れることができる。4つのレーンを周辺視野に入れ、背後のサイドレーン1つだけが視野外になる。


【ハーフスペースで半身になった場合】
ハーフスペースで半身になり、同サイドのサイドレーンからのパスを受ける時の周辺視野はハーフスペースとサイドレーンの2つのレーンしか見えない。背後の3つのレーンは見えない。


【センターレーンにポジションを取った場合】
センターレーンにポジションを取り半身になった場合の視野は、相手ゴールと3つのレーンを周辺視野に入れることができる。背後のハーフスペースとサイドレーンの2つは視野外になる。ハーフスペースはセンターレーンに比べて同サイドのサイドレーンからパスを受ける際の周辺視野では劣る。


【ハーフスペースのパスコースオプション】
ハーフスペースにポジションを取る選手が半身の状態で、センターレーンの選手からボールを受け、相手ゴール方向におよそ45度ターンをして「斜めの視野」を取ると、相手ゴール方向の5レーン全てと、自ゴール方向にボール保持者近くの3レーンを周辺視野に入れることが可能になる。ハーフスペースはグラウンド中央から離れることなく、外側のサイドレーンにも近いのだ。つまり、ハーフスペースで「斜めの視野」を持ってボールを保持するとセンターレーンでボールを保持するのと同じくらいのパスコースオプションがある。周辺視野を180度とするパスコースオプションは5つある(縦パス、内側と外側への斜めのパス、横パス、バックパス)。


【ハーフスペースでボールを保持した場合】
同時にハーフスペースでボールを保持するとサイドレーンでプレーするのと同様の効果がある。ハーフスペースでボールを保持すると内側と外側へのパスコースがあるので、相手の守備組織全体が、サイドレーンとセンタ ーレーンおよびハーフスペースのゾーンを埋めるようにスライドするからだ。次にハーフスペースでボールを保持すると、相手の守備の密集度合がセンターレーンよりも少ないので、スペースが与えられプレースペースが確保されるという利点もある。


【ハーフスペースでボールを受けるとサイドチェンジの効果がある】
もう1つのハーフスペースの効果は、ハーフスペースからもう1つのハーフスペースへのサイドチェンジの効果だ。前述したが、ハーフスペースでボールを保持すると相手の守備組織全体はスライドして、サイドレーンまでを埋めるようになる。通常、ゾーンディフェンスをするチームは、ボールサイドに寄ってコンパクトな陣形になるので、もう片方のハーフスペースがオープンスペースになりやすい。そこでハーフスペースでボールを保持する選手からもう一方のハーフスペースにポジションを取る選手にボールを渡すと、一瞬、前方にオープンスペースと数的優位な状況ができる。相手チームは、急いで守備組織を逆のサイドレーンまで移動することになる。


【センターレーンにポジションを取った場合の周辺視野】
センターレーンで半身の状態でボールを受け、「斜めの視野」を取った場合は、相手ゴール方向の4レーンを周辺視野に入れることができるが、ボ ール保持者の背後のサイドレーンが視野外になる可能性がある。


【センターレーンのパスコースオプション】
周辺視野を180度としたセンターレーンのパスコースオプションは4つある(縦パス、外側への斜めのパス、横パス、バックパス)。ハーフスペ ースとのパスコースオプションの異なるところは、センターレーンでボールを保持した場合のパスは、縦パス以外は全て外側方向へのパスである。相手ディフェンスはグラウンド中央を固めて、攻撃側にスペースを与えず内側から突破をさせない守備を徹底する。


センターレーンでボールを保持する方が相手ゴールに近くダイレクトにゴールへ向かうことができるので有利であるが、ハーフスペースでボールを保持する効果は、センターレーンと比べて周辺視野の面とパスコースオプションの面で同等以上である。ハーフスペースでボールを保持することで、相手はサイドレーンまで移動しなければならない。その状況から逆サイドのハーフスペースへパスすると、サイドチェンジの効果もある。

そのように考えると、ハーフスペースでボールを保持することは、センターレーンでボールを保持する時と同じような効果がありながらも、相手の守備の密集度合についてはセンターレーンよりも少なく、プレーオプションが内側と外側にあり、相手は対応に苦慮することになる。

【ハーフスペースの効果】
●ハーフスペースの利点はグラウンドの斜め前方内側を見るだけで、相手ゴールが視野に入り、グラウンド中央から離れていないのでプレーのオプションもセンターレーンでプレーをするのと同じくらいある。
●ハーフスペースのパスコースは縦、外側、内側、横、後ろの5つであるが、センターレーンは縦、外側、横、後ろの4つである。
●サイドレーンに近いので、サイドレーンでプレーをするのと同様の効果も期待できる。
●ハーフスペースからハーフスペースへパスをするとサイドチェンジの効果がある。

出典:『ダイヤモンドオフェンス サッカーの新常識 ポジショナルプレー実践法』著/坂本圭

『ダイヤモンドオフェンス サッカーの新常識 ポジショナルプレー実践法』
著者:坂本圭

日本ではまだ珍しいサッカー攻撃の概念・ポジショナルプレーを取り入れた戦術書!!スペインのプロチームでコーチライセンスを獲得した著者が、サッカーを勉強したい学生や指導者、日本式ではなく世界のトップシーンで導入されている新しいサッカーの攻撃方法を実践したいと思っている方々のために、ポジショナルプレーを実践するための方法としてダイヤモンドオフェンスを伝授します。