相手の守備と逆の配置の攻撃
相手の守備と逆の配置である「静的な配置」から行う攻撃がポジショナルプレーの醍醐味だ。相手の守備配置システムと逆の攻撃配置システムを使うことで、ある特定のスペースで位置的優位を獲得でき、オーバーロードの状況が生じる。
選手1人1人が相手の守備組織のライン間やライン上(ページ参照)、オープンスペースにポジションを取り、ボールを循環させることで、相手がボール保持者に対応すると、さらに新たなオープンスペースやオーバーロードの状況が発生する。
●相手の守備と逆の配置 3-2-2-3対4-4-2
3-2-2-3のアンシンメトリーの配置。選手全員が相手のライン間、ライン上、オープンスペースに配置されてパスコースを確保している。必ずDFラインでは数的優位にする原則。
※相手の守備と逆の配置システムは4-3-3の基本としている。ここで紹介する様々なバリエーションはその4-3-3の可変システムである。
相手はやむなく攻撃側の「静的な配置」に対応するためにマンツーマンのような配置になることによって新たにオープンスペースが生じる。攻撃側も相手の守備配置の変換に対応し、新しくできたオープンスペースを利用する。
攻撃側の選手がオープンスペースに動く「動的な配置」にすることで絶え間なくオーバーロードの状況を生じさせて、パスコースやオープンスペースを作り出す。その結果、相手はどのように守備をしたら良いのか困惑し、最終的にゾーンディフェンスがマンツーマンのようなディフェンスになる。それが相手の守備と逆の配置を使う狙いである。
●相手DFラインのマンツーマンのような配置
相手がマークするとマンツーマンのような配置になる。
ポジショナルプレーを実践するときに、最初にすることは、相手の守備と逆の配置にすることである。相手がそれによってどのようなリアクションをするのかに応じて、攻撃側もオープンスペースに動いていく。相手の守備と逆の配置のシステム例をいくつか紹介する。
●相手の守備と逆の配置 3-4-3対4-4-2
3-4-3の配置(中盤ダイヤモンド)。特徴はダイヤモンドの形が非常に作りやすい。4-4-2に対する理想的なシステムであるが、攻撃的な反面、前に人数をかけているのでカウンターアタックには弱い。
●相手の守備と逆の配置 2-3-2-3対4-4-1-1
2-3-2-3アシンメトリーの配置。相手が1トップなので2バックで良い。相手チームにはトップ下がいるので、縦に並ぶ2トップと考えることもできる。安全な配置は3バック、1ピボーテである。どちらかのSBの攻撃力が強力な時に有効。
●相手の守備と逆の配置 2-3-2-3対4-1-4-1
2-3-2-3の配置。両SBがハーフスペースまでポジションを閉じて、中央に多くの選手を配置。ダイヤモンドの形が作りやすく相手を中央に引きつけ外側のWGをフリーにする。SBとWGのサイドレ ーンでのコンビネーションプレーが重要。
●相手の守備と逆の配置 3-2―2-3対4-1-2-3
3-2―2-3の配置。個人的に4-1-2-3のゾーンディフェンスは攻略が非常に難しい。グラウンド中央を全て相手に埋められているからだ。プレーの原則を放棄して相手3トップに3バック、2ピボ ーテを配置することで、相手の2OMFの背後にいる攻撃側のWGをフリーにすることができる。
出典:『ダイヤモンドオフェンス サッカーの新常識 ポジショナルプレー実践法』著/坂本圭
『ダイヤモンドオフェンス サッカーの新常識 ポジショナルプレー実践法』
著者:坂本圭
日本ではまだ珍しいサッカー攻撃の概念・ポジショナルプレーを取り入れた戦術書!!スペインのプロチームでコーチライセンスを獲得した著者が、サッカーを勉強したい学生や指導者、日本式ではなく世界のトップシーンで導入されている新しいサッカーの攻撃方法を実践したいと思っている方々のために、ポジショナルプレーを実践するための方法としてダイヤモンドオフェンスを伝授します。
公開日:2021.11.18