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理論物理学者/松尾衛が説くサービスもストロークも「下から上に打つ」のが正しい理由とは!?【新装版 勝てる!理系なテニス】

ストロークも「上から下へ」は物理的に間違い

●松尾衛/理論物理学者

私は物理学者ですから、まずは自分がどうこう考える前に、徹底的に資料を集めて、調べて、テニスを研究しようと思いました。それでテニスのDVDを大量に買いあさり、50枚くらい買ったところで「お、結構いいな」と感じたものを見つけました。田中プロではない人のノウハウだったのですが。そのときテニスは3カ月くらいやって中級レベルになっていたので、やる気が湧いてきていた時期でした。DVDを見て、キャンプが3日間あるという話を聞きつけ、参加しました。

でも、研究や論文で忙しいのをいいことに、身体のケアを完全に怠っていました。しかも、20年も。だから近所のテニススクールの体験レッスンでさえ、終わったあとは足をひきずって帰るくらい体力がなかったので、3日間も朝から晩まで練習するなんて耐えられるわけがない。そこで合宿までのあいだ、ジムに通ってパーソナルトレーナーをつけて身体を鍛え、3日間耐えられるようにすることを目標にしました。

それで、なんとか無事にキャンプを終えて、さらにもう少しなにかないのかと思って、またDVDを買いあさり、80枚目くらいで田中プロに出会ったのです。書店でも『テニスは頭脳が9割』(東邦出版)を見つけて、「きたっ!」と思いました。

「テニスが頭脳」なら自分でもいけると思い、書籍も同時購入しました。そこで、「サービスは下から上に打つ。低い所で打つ」という言葉を見たのです。往年のプレーヤーが年老いて、もう肩が上がらなくなったら低い所で打つでしょ、という話をされていて、「おおお、確かに!」と思ったのを覚えています。そこから田中プロが主宰される『瞬間直し実践会』に入会することになったのです。

なぜ上から下へ打つのは間違いなのか。コートの比率から見てみましょう。コートの広さを細かい数字で出すとややこしいので、ここではネットまでの距離が約12メートルとします。コートのちょうど半分のところにサービスラインがあって、さらにベースラインがある。ベースラインから直線を引いたところ、これがギリギリのラインになります。すごく単純に説明すると、打点の高さが約3メートルないと、上から下に打ちおろしてサービスをボックスに入れることはできないとわかります。

とはいえ、実は私も、最初に聞いたときには衝撃的でした、「あっ、下からでいいんだ!」と。そして、上から打つために必要な打点の高さを概算すると約3メートルとなる。田中プロの正しさを再認識した瞬間でした。


ストロークでも、自コートのベースラインから相手コートのベースライン近くに入れるには、2メートル程度の高さから打たないと、打ち下ろして入れることはできません。フラットに入らないのです。ところがストロークを2メートルの高さから打つのは、原理的に難しいですよね。だから私はテニスを再開した初期に、相手のコートにボールを入れるにはスピンをかけるしかないことを理解したのです。

もちろんこの概算は、重力、ボールの回転、空気抵抗といったさまざまな効果を無視したものですが、物理屋は“ざっくりと捉える”というのを頭の中でよくやります。「打ち下ろす」という感覚が得策ではないことを、私はこうやって納得しました。中学生のときに「三角形の相似」というのを習いますよね。「相似なんて、なにに使うんだよ」と思っている方も多いと思いますが、テニスでしっかり役に立ちます(笑)。

【ポイント】
サービスもストロークも、「下から上に打つ」のが正しい。


出典:『新装版 勝てる!理系なテニス 物理で証明する9割のプレイヤーが間違えている〝その常識〟!』田中信弥/松尾衛

『新装版 勝てる!理系なテニス 物理で証明する9割のプレイヤーが間違えている〝その常識〟!』
著者:元オリンピック&日本代表コーチ 田中信弥
理論物理学者 松尾衛

元オリンピック&日本代表テニスコーチと気鋭の物理学者による常識を覆すテニス理論、指南書。5万人超のウィークエンドプレーヤーが納得した現場理論を、理論物理学で証明した、すべてのプレーヤーのテニスを躍進させる書。「サービズは上から下に打つのは間違い」「テニスは不等式でできている」「身体は動かさずに打つ」など、常識破り、型破りな指導法で結果を出し続ける田中コーチの独自のテニス理論を、理学博士の松尾氏が自ら体験で得たプレーを「物理屋」の観点で解説・証明する―――まったく新しいテニスの本! 

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