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ジョコビッチがテニスの達人に登りつめる為に習得した最強ツール「予測」のやり方とは!?【新装版 勝てる!理系なテニス】

勝ちたければ予測&判断を鍛える

●田中信弥/元オリンピック&日本代表コーチ

【最強ツール「予測」のやり方①】
そして、テニスの不等式の中でも最高レベルに強いのが「予測」です。サッカーや野球では、よく予測の話が出ますが、テニスも予測がなければ成り立たないスポーツです。世界トップレベルのサービスは、時速200キロを超えます。このスピードは、人間の反応力では間に合わないことがわかっています。つまり、「予測<判断<動き<打ち方」の下位3つでは、なんともできない。最上位の力を持つ予測なしでは、返球できない世界なのです。

ストロークも同じです。サービスよりスピードは落ちますし、ラリーボールなら予測なしで取れそうに思えますが、無理です。サービスに比べ、守るべきコートの広さが半端なく大きいからです。そして、テニスがうまくなればなるほど、フォームには癖がなくなります。癖がないということは、フォームを見て、ボールの飛んでくるコースを判断するのは難しい。なので、テニスレベルが高くなればなるほど、絶対的に予測が必要となるのです。

では、予測はどのようにして行なうのか? まずは、自分のガットにボールが当たる感触、ここから予測が始まります。この話をすると、かなりびっくりされます。「自分のガットにボールが当たったときに予測を開始する? 聞いたことがない」と。しかし、私たちは知らず知らずのうちに、ガットに当たった瞬間に予測をしているのです。信用できませんか? では、実例を。あなたはフレームショットを打つと、「やばい!」と無意識に感じるのではないでしょうか。なぜでしょう? 「ミスした……」「対戦相手にチャンスボールが行ってしまう……」などと感じるからです。そう、我々はすでに予測を使っているのです。そして、テニスレベルが上がれば上がるほど、普通のボールがガットに当たる感触にも敏感となり、徐々にすべてのボールに対して予測ができるように変わってくるのです。

フレームショットという極端に予測しやすいショットでなくとも、「あれ? ちょっと当たりが悪い。これは次のボールは打たれるかも」と予測するようになるわけです。もちろん、逆もしかり。ガットに気持ちよくボールが当たったときは、「よし、いいボールが飛ぶぞ。これで次のボールを攻撃される可能性は低い」との予測が立てられます。

ベテランの試合の決勝に進出するほどのプレーヤーが、「何回対戦しても勝てない人がいるのです」と、悩みを吐露されます。本当に何度やっても勝てないので、あるとき対戦相手の方に「私のなにが悪いのでしょうか?」と質問したそうです。すると、「あなたの打つコースは全部わかります」と言われたそうです。「やはり、うまい人は予測・判断ができている」と、しみじみ思ったそうです。どれだけ打ち方を洗練させても勝てない。どれだけ動く練習をしても勝てない。なぜなら相手は、常に先回りしてボールの所で待っているわけですから。これほどテニスをやっていて、つらいことはありませんよね。

【最強ツール「予測」のやり方②】
予測法は、まだまだあります。ガットに当たるボールの感触の次は、ボール軌道。あなたが打ったボールがネットを越え、対戦相手のコートにバウンドするまでの軌道。この軌道を見て、次のボールを予測するのです。ネットを越える時点で、まだまだ上昇気流を描いているなら、基本的に深いボールが飛ぶ確率が高い。当然のことながら、攻撃される確率は低くなります。ですから、ネットを越えるときに上昇気流に乗った軌道をボールが見せたときは、100パーセントではないにしろ、「よしっ、これで次に打ち込まれることはないな!」と予測できるわけです。


●自分の打ったボール軌道を見ることで、相手プレーヤーがどう打ってきそうなのかを予測する方法。浅いボールになった場合、次のボールは攻撃されそうだと予想できるため、少し後ろに下がって構えておくなどの準備ができる

【最強ツール「予測」のやり方③】
3つ目の予測法は、ボールのバウンドです。あなたが打ったボールが、相手コートでバウンドする際、グンッと高く弾はずむ。もしくは、ピュッと低くボールが滑る。このふたつの現象を見て取れたら、「あっ、次に返球されるボールはチャンスかも……」と予測できます。想像以上に弾むボール、滑るボールは、究極に打ちにくいため、打ち損じる可能性が極めて高くなるからです。

野球のピッチャーでも、初速より終速が大事といわれますよね。テニスも同じで、打った瞬間のボールスピードが速いことより、バウンドしたあといかに急激に高く弾むか、いかにボールが伸びるか、いかに滑るか。ここで、次の相手からの返球の質が大きく決まるわけです。

そのため、打ったボールの弾み方は、注視しておいて損はありません。半面、あなたが打つとき、グンッと弾む、ピュッと滑るボールに遭遇したときは、細心の注意を払って返球しないと、高い確率で次のボールを攻撃される憂き目に遭うことも覚えておいてください。まだまだ予測法はたくさんあります。しかし、まずはガットに当たるボールの感触、ボール軌
道、ボールの弾み方の3つの予測法を徹底的に練習する。ここから始めてください。

【予測と判断のふたつが噛み合うと……】
なるべく早く、相手が打つボールがどこに来るかを判断する。最低でも対戦相手のボールがネットを越えてくる前。慣れてきたら、相手が打った直後。ここで、飛んでくるコースや回転などを判断できれば、かなり余裕を持って対処できるようになり、ミスも確実に減るでしょう。

テニスは、対戦相手の打つボールがどこに来るかがわかれば、早くボールの所に向かうことができます。すると、打つ前に余裕ができる。余裕があれば、正確なショットが打ちやすい。正確なショットは、対戦相手を苦しめます。対戦相手からの返球が、だんだん弱々しくなるのです。そして、このプロセスを繰り返していくと、最後にはチャンスボールが来るようになるわけです。

テニスには、支配する側と支配される側しかいません。なので、あなたが余裕を持って正確なショットを打つなら、明らかに支配する側に立つわけです。チャンスは劇的に増え、ポイント取得率は大幅にアップ。勝利が勝手に向こうから寄ってくるプロセスを生み出すことに成功する、といっても過言ではないのです。

言うなれば、予測と判断の組み合わせは、余裕の前倒しを手に入れる戦術です。そして、これができるプレーヤーこそがテニスの達人となる。そのために、「予測>判断>動き>打ち方」の不等式を強く意識して練習に励むことが絶対的に必要なのです。

『新装版 勝てる!理系なテニス 物理で証明する9割のプレイヤーが間違えている〝その常識〟!』
著者:元オリンピック&日本代表コーチ 田中信弥
理論物理学者 松尾衛

元オリンピック&日本代表テニスコーチと気鋭の物理学者による常識を覆すテニス理論、指南書。5万人超のウィークエンドプレーヤーが納得した現場理論を、理論物理学で証明した、すべてのプレーヤーのテニスを躍進させる書。「サービズは上から下に打つのは間違い」「テニスは不等式でできている」「身体は動かさずに打つ」など、常識破り、型破りな指導法で結果を出し続ける田中コーチの独自のテニス理論を、理学博士の松尾氏が自ら体験で得たプレーを「物理屋」の観点で解説・証明する―――まったく新しいテニスの本! 

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