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世界で勝てるテニス選手になった錦織圭が迫力ある打ち方以上に長けていることとは!?【新装版 勝てる!理系なテニス】

うまくなる人、ならない人

●田中信弥/元オリンピック&日本代表コーチ

予測や判断の世界は、顕在化されていません。そして、頭の中の作業なので体感しづらい。ですから、「動け!」とコーチに言われて一生懸命に動く練習を続けると、「動くからこそボールが取れる!」という認識になるのです。もちろん、そのとおりで、動くからこそボールは取れるわけですが、それがすべてではない。とくにテニスレベルが高くなればなるほど、動きだけですべてのボールを取れるほど甘い世界は存在しなくなる。無意識下で予測・判断を使っていたからこそボールが取れた、という奥の世界が幅を利かせ出すわけです。テニスセンスのある方は、自分でも気付かないうちに、予測・判断を使ってプレーしています。それを誰もがやれるように、練習に組み入れてシステム化する。これができれば、より多くの優秀なテニスプレーヤーが出現することになるでしょう。

錦織選手は、対戦相手を観察するのが小さい頃からうまかった。つまり、予測や判断を無意識に使っていたのです。だからこそ、ボールの威力がそれほどなくても、身体が小さくても、試合に勝てたのです。現在の彼を見ると、どうしてもあの迫力のある打ち方、気持ちのいいエースなどに目が奪われます。が、その奥に、予測・判断もずば抜けているという事実が隠されているわけです。

ジュニア選手の話となりますが、いくらボールを打つ才能があっても、「この子は将来、伸びないかもなぁ……」と、心配になる子がいます。そういう子に共通するのは、予測・判断が苦手だということ。ボールを打つ才能に任せ、ガンガン打つだけ。なので、テニスの奥深さに触れない幼少期にはトップの戦績を出すけれども、だんだんと成績が落ちてくる。すると、テニスが面白くなくなり、やめてしまうこともある。非常にもったいないことです。

世界ランキング最高47位までになった添田豪選手。彼が14歳のときに、日本代表コーチとして指導したことがあります。当時16歳以下の日本ナンバー2だったと記憶しています。そこで驚いたのが、「なんじゃこりゃ?」というほど、テニスをわかっている。私が25歳すぎに気付き出し、現役引退後、死に物狂いで勉強した予測・判断を、若干14歳ですでに体現できている。「これは世界に行くな!」と直感的にわかりました。

ジュニアにありがちな、バンバン、ガンガン、なんでもかんでも強くボールをひっぱたく姿をみじんも見せない。対戦相手を見て、予測・判断を行ない、適切なショットを、適切なスピードで打つ。そんな彼は世界で活躍し、オリンピックに錦織選手と共に出場しました。

こういう話をすると、「それは世界を目指す選手だからできることですよね?」と言われる方がいます。違います。予測・判断という世界の存在に、気付いているか? いないか? 気付いているなら、使っているのか? いないのか? たった、これだけの話です。その証拠に、年配の達人ウィークエンドプレーヤーの例も挙げましたし、私自身も年齢を重ねれば重ねるほど、予測・判断がうまく機能し、プレーの余裕度が格段に上がっているのを肌で感じています。

 重要なことは、ウィークエンドプレーヤーの99パーセントは、予測・判断の世界に積極的に触れていないという事実。これは、本当にもったいない。完璧でなくてもまったく構わないので、少し手をつけ、その違いを体験してもらいたいと考えています。

正直なところ、80歳のウィークエンドプレーヤーの方でもできます。感じる、見る、という作業が圧倒的に多いテクニックだからです。そして、年齢が上がれば上がるほど生きるテクニックでもありますので、テニスの不等式「予測>判断>動き>打ち方」を理解し、もうひと花もふた花も咲かせてもらえればと思います。

『新装版 勝てる!理系なテニス 物理で証明する9割のプレイヤーが間違えている〝その常識〟!』
著者:元オリンピック&日本代表コーチ 田中信弥
理論物理学者 松尾衛

元オリンピック&日本代表テニスコーチと気鋭の物理学者による常識を覆すテニス理論、指南書。5万人超のウィークエンドプレーヤーが納得した現場理論を、理論物理学で証明した、すべてのプレーヤーのテニスを躍進させる書。「サービズは上から下に打つのは間違い」「テニスは不等式でできている」「身体は動かさずに打つ」など、常識破り、型破りな指導法で結果を出し続ける田中コーチの独自のテニス理論を、理学博士の松尾氏が自ら体験で得たプレーを「物理屋」の観点で解説・証明する―――まったく新しいテニスの本! 

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