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錦織圭の『エアK』のようにジャンプして打たない方がいい理由とは!?【新装版 勝てる!理系なテニス】

沈み込むとうまく打てる不思議

●田中信弥/元オリンピック&日本代表コーチ

元女子世界ナンバーワンプレーヤーである、セリーナ・ウィリアムズ選手や、アンジェリック・ケルバー選手などが時々見せるシーンに、打ったあとに“ストン”とお尻が地面に着くくらい沈み込むものがあります。とくに打点がズレたときや、イレギュラーバウンドに対応したときに多いのですが、そんなときに伸び上がったらそれこそ最悪です。せっかく回転運動で発生させたエネルギーを、一気に上方に逃がしてしまうことになるからです。

ここから言えることは、なるべくジャンプをしないで打つことがテニスでは大切であるという話です。すると、「えっ? でも世界トップ選手の映像を見ると、ジャンプして打つ場面がとても多いですよね? あれはなんなのですか?」という疑念が生まれると思うので、説明します。 ひと言で言えば、「エネルギーが強すぎてジャンプしてしまうときもある」ということです。竹とんぼもそうですが、ビュ~ンとものすごい回転運動を発生させると、空高く舞い上がりますよね。あの状態に似ています。ものすごい回転運動を、体幹を中心に発生させようとすると、結果的に地面をすごい力で蹴ります。その力が沸点を超えると、ジャンプしてしまうのです。

“してしまう”がポイントです。ジャンプしようとして飛んでいるのではなく、エネルギーがすごすぎてジャンプしてしまうわけです。「なるほど。でも、錦織選手の『エアK』は、明らかに自分からジャンプしているように見えるのですが……」との疑問も出ると思うので、こちらにもお答えします。

この電子のスピンはナノメートルの世界のテニスボールに相当していて、実験で扱うミリメートルサイズの物質がラケット。電子をテニスボールのサイズと思うとラケットが地球と同じくらいのサイズになるわけです。いわば、地球サイズの巨大ラケットをぐるぐる回しながらテニスボールの動きを自在に操ることを四六時中考えてきたのです。

確かに、錦織選手のエアKは、地面を蹴ってジャンプをしますが、この場合のジャンプは打点に移動するために行ないます。エアKの打点は、かなり高いですよね。なので、ジャンプして適性打点を確保する。これがどうしても必要なわけです。

つまり、ジャンプする主な理由は次のふたつになります。

・回転エネルギーが大きすぎてジャンプしてしまう
・高い打点のボールを打つための打点移動に使う

世界トップ選手がジャンプして打つ映像を見ると、「ジャンプして打ったほうがいいのかな?」と思う方も多いですが、事実は逆です。世界トップ選手のように、膨大な回転エネルギーが発生していない限り、なるべく身体を浮かして打たない。時には沈み込みを意識して打つ。こちらのほうが、理にかなった基礎的な打ち方になります。

余談ですが……昔、自己啓発のセミナーで、空手の板割りをやりました。腰を入れて、少し沈み込むように打つと、一発で割れました。素人なのに。反対に、地面を蹴って力を出そうとしていた人は割れなかったのです。とくに、身体が上に浮く、後ろから前に踏み込むような動作をする人は誰ひとりとして割れていませんでした。これこそまさに、ジャンプして力を逃してボールを打つか? 股関節を絞り込むようにして、小さなギュッと実の詰まった回転、すなわち沈み込みが発生する打ち方でボールを打つかの違いなわけです。

【ポイント】身体を浮かさず、沈み込んで打つと、身体の回転運動を強く意識することができる。

『新装版 勝てる!理系なテニス 物理で証明する9割のプレイヤーが間違えている〝その常識〟!』
著者:元オリンピック&日本代表コーチ 田中信弥
理論物理学者 松尾衛

元オリンピック&日本代表テニスコーチと気鋭の物理学者による常識を覆すテニス理論、指南書。5万人超のウィークエンドプレーヤーが納得した現場理論を、理論物理学で証明した、すべてのプレーヤーのテニスを躍進させる書。「サービズは上から下に打つのは間違い」「テニスは不等式でできている」「身体は動かさずに打つ」など、常識破り、型破りな指導法で結果を出し続ける田中コーチの独自のテニス理論を、理学博士の松尾氏が自ら体験で得たプレーを「物理屋」の観点で解説・証明する―――まったく新しいテニスの本! 

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