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理論物理学者/松尾衛が語る大人になってからテニスを始めた人の上達を遅らせる最大要因とは!?【新装版 勝てる!理系なテニス】

相反する概念を融合させるには?

●松尾衛/理論物理学者

ミスをすることは、上達するうえでとても重要ですよね。

「なぜジュニアの頃からやっている人と、こんなにボールの飛び方が違うのか?」についていろいろ調べました。田中プロの話を含めて考えると、小さい頃は思いきりひっぱたいて打っても、ネットにかかるくらいしか飛ばない。それくらい身体が小さい。力がないのです。だから、手加減などしたことがない。はるか彼方にあるネットを、どうやって越すか? そんなところから始まっているのでしょう。

でも、社会人になって始めた方は、すでに身体が大きくなっているので、間違った打ち方でもカーンとホームランできてしまう。だから、出発点がまったく違うのです。

大人になってからテニスを始めた人が、上達を遅らせる最大要因は、「見栄」と「失敗への恐れ」です。だからジュニアのようにホームランなど思いきった練習ができないのです。

しかし我々研究者は、年がら年中、失敗しています。ダメなのが当然。うまくいくことなんて、年に数回もないんですよ。だから、テニスでもミスすることにあまり抵抗がなく、どんどん試行錯誤したから、上達が早かったのだと思っています。

失敗を恐れずどんどん試行錯誤すること、これがすごく重要なのです。以前予備校で教えていたことがあります。いろいろな学力レベルの子を見てきました。そして、学力が伸びていかない子の多くは、小さい頃にミスをすると先生や親に厳しく怒られた経験が多いことがわかったのです。怒られたくないからミスは隠す。自分がわからないことは黙っておく。なので、本来どんどん失敗してもよいはずの場所である予備校で、わからないことを教えてもらえる予備校で、質問できない子がいるのです。

研究は、失敗の連続です。そこから学んで、学んで、新発見をするわけですよね。かの有名なアインシュタイン博士の名言、「私は失敗などしていません。うまくいかない方法を発見したのです」という言葉があるとおりです。

世界最先端は、誰もがわからない領域です。なので、わかったふりをするのが最も愚かな行為です。いい研究室や研究会ほど、年長者が「ごめん、よくわからないので、もう少し教えて」と率先して質問するんですよ。これはテニスに置き換えても同じ話で、自分が今までやってこなかったことをやるわけですから、できないことだらけのはずです。なので、失敗し続けることが、うまくなる秘訣だと思うのです。

回転運動と直線運動が両立できないことも課題です。身体も、下から上に曲げて伸ばせて、後ろから前、どちらも否定しないといけないのです。真逆の話をしながらプレーすることになるので、回転運動で物を飛ばすことを習得するのはいろいろなことが邪魔をするなと思います。

「飛ばす」と「入れる」とは相反する概念ですよね。最終的にはこのふたつをいい感じに融合させるわけですが、いきなり最適解を見つけようとするといろいろ破綻しそうです。まずは、両極端なふたつの要素を分離する、という観点ですね。「飛ばす」に限ってみても、簡単にボテボテの外野フライくらいならできるけど、大ホームランを飛ばせるかといえば、それはできていないのです。全部が中途半端で、ガツン、バーンとはいきません。

そこで疑問が浮かびます。回転して、沈み込んでいるんだけど、ボールを自分の思う方向、つまり「ストレートに打ちたい」とか「クロスに打ちたい」を実現するには、打ち方を頭で理解してからがいいのか? それとも感覚で、打って、打って、打ちまくってマスターするのか? 非常に気になるところです。

『新装版 勝てる!理系なテニス 物理で証明する9割のプレイヤーが間違えている〝その常識〟!』
著者:元オリンピック&日本代表コーチ 田中信弥
理論物理学者 松尾衛

元オリンピック&日本代表テニスコーチと気鋭の物理学者による常識を覆すテニス理論、指南書。5万人超のウィークエンドプレーヤーが納得した現場理論を、理論物理学で証明した、すべてのプレーヤーのテニスを躍進させる書。「サービズは上から下に打つのは間違い」「テニスは不等式でできている」「身体は動かさずに打つ」など、常識破り、型破りな指導法で結果を出し続ける田中コーチの独自のテニス理論を、理学博士の松尾氏が自ら体験で得たプレーを「物理屋」の観点で解説・証明する―――まったく新しいテニスの本! 

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