心臓というと、「生命に関わるもっとも重要な部分」というイメージを持っている人が多いでしょう。しかし、ミオグロビンを増やし、酸素不足を防いで肥満を解決したいならば、注目したいのは、むしろ「肺」です。まずは心臓と肺、それぞれの役割についてお話しします。
心臓は血液を押し出すポンプ
心臓と肺は、密接な関係にあります。肺は、口から入ってきた酸素を血液に入れて心臓に送るという役割を担っています。酸素を含んだ血液を受け取った心臓は、血液を全身に送るポンプの役割を果たし、ポンプの動きの回数が心拍数になります。つまり、心臓は肺から送られてきた血液をせっせと送り出す臓器であって、心臓が血液そのものをつくったり、きれいにしているわけではありません。血液を酸素たっぷりにして、心臓に送っているのは肺なのです。
肺は体というチームの要
心拍数は、肺が酸素を取り込む量(血中酸素量)によって変化します。血中酸素量が多ければ、心臓がポンプを動かす回数は少なくてすみますが、血中酸素量が少ないと、心臓のポンプの動きを速め、大量の血液を送る必要がでてきます。すると、血圧が高くなるのです。血圧が高くなるのは、心臓が酸素量を確保しようと頑張っている証であり、人間に備わった自然の調節機能なのです。とはいえ、あまりに心臓を動かせ過ぎると、やがて疲れがたまります。心臓に負担をかけないようにするには、肺の働きがとても重要になってきます。肺が酸素をいっぱい取り込んで、血液にたっぷり酸素を入れて、心臓にバトンタッチするのが理想的です。血中酸素量が十分であれば、心臓の動きは自然とゆっくりになります。
肺の造血作用について
また、肺には造血作用があることも、最近の研究でわかってきました。2017年、学術誌『ネイチャー』に発表された論文によると、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームは、マウスを使った実験で、肺が1時間あたり1000万個以上の血小板を生産していることを発見しました。これは、マウスの全血液に含まれる血小板の過半数にあたります。これまで、ほぼすべての血液成分は、骨髄でつくられていると言われてきました。厳密には、肺にも少量の造血作用があると推測されていましたが、UCSFの研究結果によれば、体内の血小板の多くが肺でつくられていることになります。血小板とは、血管が損傷したときに止血する役割を担う成分です。マウスと同様に、人間の肺でも血小板がつくられているかは、今後の研究で明らかになるでしょうが、それが証明されたら、肺の重要性はますます高くなります。酸素を取り入れるだけでなく、肺が血液そのものをつくっているなんて、驚きですね。
【書誌情報】
『肥満がいやなら 肺を鍛えなさい』
著:加藤雅俊 (薬剤師、体内環境師、薬学予防医療家)
肺の主な役割は「呼吸」と「血液循環」。酸素を含んだ血液を体内に循環させているが、十分に機能しないと不調を招く。
本書では、肺を鍛える方法として「肺ストレッチ」を提案。肺と血液の関係を説明しながら、その方法を紹介する。
公開日:2020.03.13